2012年10月20日(土)
主張
復興予算の流用
被災地支援へ根本的に見直せ
話が違うではないか―。東日本大震災の復興予算が被災地とはほとんど無関係の事業に流用されていたことに国民の怒りが渦巻いています。震災から1年7カ月もたつのに被災地では生活再建も産業の復旧も遅々としてすすんでいません。その一方で震災復興からかけ離れたところに巨額の税金がつぎ込まれていたのです。野田佳彦政権の基本姿勢が問われます。実態を厳しく調べ是正するとともに、復旧・復興政策の根本的な転換が求められます。
大企業に露骨なバラマキ
被災地では多くの自治体庁舎改修が手つかずなのに、東京・霞が関の中央官庁建物の「耐震化改修」に億単位の予算をつける。外国人観光客向けの標識を全国各地に設置する。はては国民を監視する自衛隊の情報保全隊のデジカメ購入費用に使う。北海道や長野県の自衛隊駐屯地の浴場などの建て替え費を盛り込む―。まさに“流用のデパート”、やりたい放題です。
南極での反捕鯨団体シーシェパード対策費を、捕鯨拠点の宮城県石巻市の復興に役立つといって予算に盛り込んだことは悪質な便乗です。実効ある支援を切望する被災者の気持ちを逆なでしています。「産業空洞化」対策を理由にした「国内立地推進事業費補助金」の交付先の約8割はトヨタなど大企業です。ほとんどが内部留保のためこみなどで体力が十分ある企業です。労働者のリストラをすすめるシャープなど電機大手企業も対象です。被災地の中小企業にはほとんど役立たないものです。
こんな野放図なやり方がまかりとおるのは民主党・野田政権の復興政策の大枠が間違っているからです。昨年7月に政府が決定した「復興の基本方針」に、「被災地復興」や「防災・減災」などのためと名目さえつければ、全国どこの事業であっても「復興予算」として認められる流用の仕掛けが盛り込まれました。「基本方針」のもとになった復興基本法は昨年6月、民主党政権が自民、公明両党との談合を通じて成立させたものです。同法は、被災者の生活基盤の回復よりも財界・大企業を支える「新成長戦略」の推進を大きな柱にしています。これらの方針に沿って復興予算の流用を盛り込んだ2011年度第3次補正予算に反対したのは日本共産党だけでした。
国民の批判の広がりのなか、政府は、13年度予算では使い道を精査するなどといいはじめましたが、流用の根源である「基本方針」の見直しはいっさい言及しません。12年度予算までの流用についても正当化し、まったく無反省です。民主と自民、公明の間では復興予算流用の枠組みをつくった責任の押し付け合いまでする始末です。国民不在のやり方を反省し、被災地にほんとうに役立つ復興にむけて真剣に取り組むべきです。
生活と仕事再建を中心に
政府が勝手につくって上から押しつける「復興」が、いかに無責任でずさんなものであるか、今回の予算流用問題がますます浮き彫りにしています。復興は被災地と被災者の要望を基本にすべきです。
被災者の生活基盤と生業(なりわい)の再建こそ、復興の土台にしなければなりません。住宅、商店、工場、医療機関などへの必要な公的支援を強めるなど、被災者と被災地に直接役立つ復興予算への転換が急がれます。