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2012年10月17日(水)

これって復興予算?

外国人向けの標識、東京の税務署改修

南極の捕鯨妨害対策にも

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(写真)復興予算によって外国語表示がついたバス停=埼玉県川越市

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(写真)復興予算から改修費用が支出された東京の荒川税務署

 東日本大震災の復興事業にあてられるはずの予算が被災地以外に回されています。国の復興特別会計の主な財源は、所得税に25年間上乗せされる「復興特別所得税」です。「被災地のために」と国民が負担した税金が流用されています。

 財務省は2012年度予算の復興特別会計として5億3000万円の国税庁施設費を盛り込みました。被災地から遠く離れた東京・荒川税務署、大阪・福島税務署、兵庫・姫路税務署を3年かけて総額10億4000万円で改修する計画です。

 財務省はこの三つの税務署が震度6強〜7程度の大規模地震で「倒壊し、または崩壊する危険性がある」からだとしています。財務省は「東日本大震災からの復興の基本計画」に「庁舎などが被災した場合の公的機関の業務継続体制の強化を図る」との記述があることを根拠にしています。

海外へ情報発信

 復興予算からは全国各地にある国の機関の改修費用も出されています。国土交通省が11年度第3次補正予算に盛り込んだ官庁営繕費は76億円で、そのうち63億円が東北地方以外で使われています。

 徳島県にある地方合同庁舎の改修に5700万円が計上されました。事業内容は太陽光発電設備を整備することです。

 11年度第3次補正予算に総務省は「海外への情報発信強化」として8億円を計上しました。被災地の現状を伝えるテレビ番組を制作し、日本国際放送などを通じて世界に発信するという事業です。総務省の担当者は「復興アピールと風評対策になる」と説明します。

 海外の放送事業者との共同で16本、国内事業者で42本の番組を制作し、ほとんどがすでに放送されています。予算は制作費用への補助と、放送するための番組枠の買い取りなどにあてられます。

 この事業を実際に行うのは大手広告代理店である電通です。一般競争入札で7億7000万円で受注しました。事実上の丸投げです。放送を担当する日本国際放送は、NHKが08年4月に出資してつくった子会社です。現在も取引高の8割近くがNHKを相手にしたものです。社長を務める川上淳氏は元NHK名古屋放送局長です。

 3次補正予算には農林水産省の「鯨類捕獲調査安定化推進対策」費23億円も計上されています。南極での調査捕鯨に反捕鯨団体シーシェパードが過激な妨害活動を行うので、対策を強化する事業です。農水省の予算説明文書にはこうありました。

一言入れるだけ

 「東日本大震災により、全国有数の鯨のまち、石巻周辺地域は、壊滅的な被害を受けました」

 この一言を入れるだけで、石巻と関係のない南極でのシーシェパード対策に予算が盛り込まれたのです。

 観光庁も同補正予算に「外客(外国人旅行者)誘致緊急対策事業」として14億円を計上しました。「震災後、大幅に落ち込んでいる訪日外客を早急に回復させるため」としています。14億円のうち8億円が「受け入れ環境整備事業」に使われます。外国人旅行者が日本の観光地を訪れたときに、言語面での障害を感じさせないように多言語による路線案内などを設置します。

 対象となる地域は沖縄から北海道まで全国26カ所。被災3県では岩手県平泉地域、宮城県塩釜・松島地域、福島県会津若松地域の3カ所にすぎません。沖縄県石垣地域など被災とまったく関係のない地域もまじっています。

 震災前の10年度補正予算でもほぼ同様の事業に5億円の予算が計上されていました。これは「外国人観光客の移動容易化のための言語バリアフリー化」という名目で、北海道から沖縄まで全国13カ所で多言語情報の提供を行うというものです。担当者は次のように説明します。

 「10年度は経済対策でした。11年度は風評被害対策です。事業は似ていますが政策目的が異なります」

 これでは、予算を獲得するための口実は、どのようにもなります。


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