2012年10月14日(日)
九電新社長 内部告発放置
重大事件公表せず
警備員教育なし・火力発電所侵入
「やらせメール」事件で前会長と前社長が引責辞任をした九州電力で、火力発電の責任者だった瓜生(うりう)道明現社長が相浦火力発電所(長崎県佐世保市)内で発生した部外者の侵入事件や警備業法違反を把握しながら、いまだに公表していないことが13日、本紙の取材で判明しました。瓜生社長は、「やらせメール」事件を受け、「企業活動の透明化や組織風土の改善」を掲げています。しかし、不祥事隠しの当事者というのでは、危険な原発を扱う責任者としての資質も問われます。
関係者の証言などによると、九電が公表していない同発電所での重大な不祥事は2件。いずれも内部告発があり、対応した瓜生社長は、いまだに公表していません。
虚偽の報告
その一つは、2008年2月に発覚した発電所内の警備を請け負う九電のグループ会社、九電産業の警備業法違反行為です。
警備業法では、警備員への年に2回の教育と、その実施状況がどうか、地元の警察署から立ち入り検査を受けることが決められています。
ところが、九電産業相浦事業所が08年に行った社内調査で、虚偽の報告を長年行っていたことが発覚。教育担当の副所長が所外のゲートボール大会に参加していたのに、報告書にはこの副所長が警備員の指導を行ったとするなどウソの記述が多数見つかったのです。
同調査では「本年度下期に限らず、指摘されるまでの間、警備員指導教育は、計画書の通り実際に教育を実施せず、虚偽の報告を提出していた」と長年、ウソの報告を繰り返していたことを、警備担当者自身が認めていました。
立てこもり
二つ目の不祥事は、08年9月23日の日中に起きた相浦発電所への不審者侵入立てこもり事件です。
パジャマ姿の男性が警備員のいる正門から、発電所内に侵入。警備員が制止できず、警察に通報しました。捜索の結果、男性はタービン建屋3階に立てこもっているのを発見されたといいます。
タービン建屋付近は、燃料の重原油やアンモニア等の危険物を保管し、巨大な羽根車が高速回転する、発電所内でも特に危険な地域でした。
火力発電所は、テロの標的になるおそれがあるとして、最重点警備対象施設に指定されています。
危険な施設への侵入を許したことから、長崎県警は九電産業を厳しく指導、注意したといいます。
当時、火力発電本部長として火力部門の責任者だった瓜生副社長あてに、関係者は11年10月に侵入事件と警備業法違反の事実を告発。瓜生副社長に調査と公表を求めたものの、対応がありませんでした。
原発守る?
告発した発電所関係者は「警備員は転勤で原発を警備することもある。相浦発電所だけの問題ではすまない。立てこもりの背景には、警備業法違反があったし、非公表なのも違反行為の露見が怖いからだと思う。瓜生社長はコンプライアンス(法令順守)を口にするが、それができない人が原発も含めた防災の責任者だと思うと恐ろしい」と憤ります。
本紙の取材に、九電産業と九電は、2件の不祥事について認めました。ただし、虚偽報告について、九電産業は「指摘する事実があったのは08年1月の2回分だけ」としています。
九電は「告発を受け、九電産業に問い合わせたところ、問題ないとの回答を得たので、解決ずみとした。この告発を受けたことは瓜生社長も認識している」とのべました。