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2012年10月14日(日)

全組合員43人が正社員に

徳島・光洋シーリング

偽装請負告発 仲間の力で勝ち取る

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 トヨタ自動車の孫会社、光洋シーリングテクノ(徳島県藍住町)で、最後の契約社員だったJMIU(全日本金属情報機器労働組合)の組合員2人が正社員に登用されました。これで、5年前に初めて正社員登用させて以降、契約社員の組合員43人全員の正社員化を実現。請負会社の契約社員のときに違法な偽装請負を告発し、労働組合の力で到達した画期的な成果です。(酒井慎太郎)


■全国に先駆け

写真

(写真)全組合員の正社員化を喜ぶ組合員ら=12日、徳島県藍住町

 全組合員を正社員化させたのは、JMIU光洋シーリングテクノ関連支部。2004年9月の結成以来、請負とは名ばかりの偽装請負の是正や事実上の派遣先に正社員化を求めるなど、全国に先駆けてたたかってきました。

 同社は06年10月以降、組合員ら請負会社の契約社員を自社の契約社員として順次、直接雇用。さらに07年12月から契約社員の正社員登用をすすめていました。今回の2人は9月末に登用されました。組合員でない人を含めると約100人を正社員にさせました。

 組合員は青年が中心で勤続は16年から7年。時給約1100円で200万円ほどだった請負当時の年収は、正社員化によって倍増しました。

 この間、直接雇用と正社員登用が順調にすすまず、労組は24時間ストライキを3度打つなど強く実施を要求。契約社員の一部を正社員登用させてからの5年間、組合員は一人も脱落せずに団結し、全員の正社員化を迫ってきました。

■たたかい支え

 一方、労組をけん引してきた矢部浩史さん(47)は10年8月末、勤務不良などを理由に雇い止めされました。現在、同支部の特別執行委員。全組合員のカンパで生活を維持し、たたかいを支えてきました。

 昨年から支部委員長を務める黒坂和也さん(32)は「うれしい。組合活動をやってよかった。矢部さんがおったからできた」と話します。勤続13年。4年前に正社員になりました。「正社員になって、品質問題など向き合うところがいっぱいできた。さらに頑張り、安心して定年を迎えられる会社にしていきたい」


地域で信頼される労組に

 全組合員の正社員化を勝ち取ったJMIU(全日本金属情報機器労働組合)光洋シーリングテクノ関連支部。結成から8年、正社員登用の道を切り開いてから5年で実現しました。不屈の団結で歩み続けます。

 「やっと全員。ここで初めて、よかったと喜べる」。2007年末の第1陣で正社員になった安宅徹さん(32)は笑顔を見せました。

 会社は違法に働かせておきながら、英語や一般教養の筆記試験などで選別。自分より勤続が長い同僚が落とされ、素直に喜べませんでした。

 「安定した生活を獲得できるか、また請負会社を転々とするか。人生の分岐点だった」と、労組を結成した当時の心境を振り返る安宅さん。「労働組合に感謝。人生、大きく変わりました」

 今回、正社員になった年配の男性は失業も覚悟していました。「正社員になれるか、それとも生活保護か。天国か地獄かのところでようやく正社員になれた。ほっとしています」と喜びました。

 正社員より生産の量も質も求められ、差別された現場で結集した組合員たち。賃金は正社員の半分、部品を交換するようにクビにされていました。

 06年10月に組合員ら一部の労働者の直接雇用を実現。それからも試練の連続でした。

 次の直接雇用は07年7月。人数が少なく、その次は結局、約2年半後の10年1月でした。正社員登用を4年近く待たされた組合員もいました。その間、リーマン・ショックで残業代がなくなり、家族のために生活保護を受ける青年まで出ました。

 組合員は「最後の一人まで正社員にする」と結束。3年前の春闘から「団結」のハチマキを締め続けています。

 勤続16年の松本好雄さん(55)は、第1陣で正社員に登用されてから5年が経過。「全員が正社員になれなかったら、自分の正社員は捨ててもいい」と思ってきました。他の組合員も同じような考えです。「仲間意識がある。最高の組合ですよ」と語りました。

 同支部の成果は正社員登用にとどまりません。フルタイムで正社員と同じ仕事をしていた2人のパートについて、まず時給1割増の契約社員にし、さらに正社員登用を実現。また、賃金体系のひずみを明らかにして是正させ、中途採用者は最も多い人で月額の基本給を5万円近くも引き上げさせました。

 「これまでは、大きな目標に向かっていくシンプルな道のりだった。これからです」と気を引き締めるのは、支部役員の男性(40)。これまでも、お手本があるわけではなく、手探りのたたかいでした。「組合としてのホンマの真価が問われる。これからも一枚岩でいたい」と話しました。

 徳島労連事務局長でJMIU徳島地方本部の森口英昭委員長は「要求を実現することが最大の自信と確信になる。彼らはたたかいのなかで成長しています」と強調。「周囲に目を向けて経験を生かし、地域で信頼される労働組合になってもらいたい」と期待を寄せています。


 偽装請負 請負会社が、ある仕事を企業から請け負った場合、請負会社の人間が請負労働者を指揮・命令しなければなりません。光洋シーリングテクノは、自社の社員が請負労働者を指揮・命令していました。このように、光洋シーリングテクノと請負労働者との間に指揮・命令関係がある場合、法律上は労働者派遣になります。みかけは請負なのに実態は労働者派遣。これが、違法な偽装請負です。


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