2012年10月10日(水)
主張
日本経済
“失われた30年”突入の予感
東日本大震災の打撃から持ち直し始めたかのようにいわれた日本経済の指標が相次いで悪化し、経済の先行きに不安が広がっています。1990年代初めのバブル崩壊後、“失われた10年”や“20年”が指摘されてきたように、もともと長期にわたって停滞を続けてきた日本経済が、“失われた30年”に突入しているという見方も浮上しています。大企業の利益を優先させて国民の暮らしを犠牲にし、国内需要より外需に依存してきた日本経済の根本的転換が迫られているのは明らかです。
経済指標の相次ぐ悪化
日本経済の停滞は長期にわたるものですが、ここ数カ月の経済指標の悪化は、東日本大震災の復興事業などの効果を打ち消しており、日本経済の深刻さをあらためて浮き彫りにしています。9月の鉱工業生産指数は前月比1・3%減と2カ月連続の減少となり、大震災の打撃を受けていた昨年同期に比べても4・3%の減少となりました。貿易収支も8月は2カ月連続の赤字となり、赤字幅は8月としては昨年に次ぐ史上2番目の赤字幅となりました。世界的な景気低迷による欧州向けなどの輸出の落ち込みが響いています。
政府の景気についての判断(「月例経済報告」)も9月は「緩やかに回復」という見方から「足踏みが見られる」という見方に変わりました。経済の動きを先取りするといわれる日本銀行の短期経済観測調査でも、製造業を中心に「悪い」と見る企業が「良い」と見る企業を上回っています。
日本経済の長期にわたる停滞は、長年にわたって大企業本位の経済政策が続けられ、「構造改革」路線が加速して、国民生活を犠牲に大企業の利益優先の経済活動が続けられてきたからです。
日本の大企業は、労働者に低賃金を押し付け、正社員を減らして非正規の雇用を増やしたうえ、景気が悪くなると「派遣切り」などで切り捨ててきました。国内の購買力が落ち込んで国内では売れず、輸出に依存してきた結果、外需が落ち込めば行き詰まるという出口のない状態を繰り返しています。欧州などへの輸出が行き詰まり、停滞が深刻化している今日の事態はその表れです。
その半面、輸出で大もうけした大企業は巨額の内部留保をため込み、国内では使い道がないので、アメリカやヨーロッパでの金融投機を拡大してきました。ところがそのやり方も2008年のリーマン危機など国際的な金融危機で通用しなくなっています。金融・財政危機が欧州各国に広がるとともに、日本経済はますます不安定な状態に追いやられています。
内需主導の経済成長へ
“失われた20年”といわれるように、日本経済はこの20年ほとんど成長が止まった状態です。労働者など雇用者の所得は落ち込んでいるのに、大企業は内部留保を200兆円以上もためこんでいるというのは異常のきわみです。政府は金融緩和や補正予算など小手先の対策を繰り返していますが、内需主導の経済に根本的に転換しない限り安定成長は実現しません。
“失われた30年”を現実のものにしないためにも、大企業の巨額の内部留保を社会に還元させ、国民の所得を増やし、家計を温め、日本経済を内需主導の健全な成長にのせていくことが急務です。