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2012年10月9日(火)

山中さんノーベル賞

「再生医療」に道開く

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 私たちの体は、骨や血液、筋肉、臓器などさまざまな器官、組織で成り立っています。それぞれの器官や組織をつくっているのは、形態や機能の異なる細胞です。しかし、これらの細胞も、もとは1個の細胞(受精卵)でした。

 このように、受精卵はあらゆる細胞に分化する能力(多能性)をもっていますが、分化が進むにつれて多能性は失われます。皮膚や心筋をつくる細胞(体細胞)が別の種類の細胞になることは、ふつうありません。

 ノーベル医学・生理学賞の山中伸弥京都大学教授は、この“常識”を打ち破り、ヒトの皮膚の細胞から、どんな細胞にもなる能力を持つ「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」をつくりだしました。

 ヒントは、受精1週間後の初期胚(はい)から取り出した細胞を培養してつくられた「胚性幹細胞(ES細胞)」でした。ES細胞は、体のあらゆる細胞に分化することができます。しかし、生命の萌芽(ほうが)ともいうべき受精卵からつくるため、ES細胞には倫理的な問題があります。

 山中さんは体細胞とES細胞の、遺伝子の働きの違いに注目。ES細胞でだけ働く遺伝子が、多能性を維持する因子ではないかと考えました。

 マウスを使って実験を続けた結果、2006年に、特定の4種類の遺伝子を使うことで皮膚の細胞から万能細胞をつくりだすことに成功、iPS細胞と命名しました。山中さんは、さらにその翌年、ヒトの皮膚の細胞からiPS細胞をつくりだしたのです。

 iPS細胞の登場で、病気や事故で失われた、体の器官や組織の機能を取り戻させる「再生医療」への期待が高まっています。体細胞からつくるiPS細胞なら、ES細胞のような倫理的問題は生じないからです。他人の臓器を移植する際に生ずる拒絶反応も起こらないという利点があります。

 また、患者の細胞を使ってつくったiPS細胞で薬の効果や副作用を確かめることもできるとみられています。しかし、iPS細胞をつくるときに使う遺伝子によってがん化しやすいなどの問題があることもわかっています。また、目的の細胞をどうやってつくるかも大きな課題です。

 iPS細胞の研究は、いま世界中の研究機関がしのぎをけずっています。国内では、脊髄損傷患者のiPS細胞から神経をつくって移植するための実験や、iPS細胞から網膜をつくる再生医療研究が進められています。網膜では来年から山中さんが待ち望んでいた臨床研究が始まる見通しとなっています。(間宮利夫)


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