2012年10月9日(火)
原発再稼働 責任押しつけ合い
規制委 「安全だけ確認」、首相 「規制委が判断」
原発再稼働の判断をめぐって政府と原子力規制委員会が責任を押し付け合っています。原発ゼロを求める世論を無視して、再稼働を自動的にすすめていく狙いが浮かび上がっています。(深山直人)
“自動的に”推進の危険
「規制委は科学的、技術的見地から安全基準を満たしているかを確認する。稼働の判断とか地元への説得は事業者や省庁に担当していただくべきだ」
原子力規制委員会の田中俊一委員長は3日の委員会でこうのべ、規制委が再稼働の判断はしないとの考えを表明しました。
他の委員も「規制委が安全性の判断を下すことは、再稼働するかの最終判断の決定にあたっての必要条件だが、十分条件になるかは別問題だ」(大島賢三委員)と表明。委員長見解は5人の委員全員の共通見解として了承されました。
一方、野田佳彦首相は「原子力規制委員会が安全基準をまとめ、それに基づき判断する。政治が介入して何か言うことは独立性を損なう」(9月21日)とのべ、政府は再稼働判断に関与しない考えを強調。規制委の見解と矛盾する考えを示しています。
「丸投げ」
藤村修官房長官も3日の記者会見で「再稼働は法律的には認可も必要ない」「(再稼働を)止める仕組みはない」として、「(再稼働を判断する)閣僚会合などを開催することは考えていない」、地元自治体の理解を得ることも「電力会社が行う」とのべました。
規制委の安全判断さえあれば、地元工作を電力会社に任せ再稼働を自動的にすすめようというのです。
福島原発事故後初の再稼働となった大飯原発3、4号機をめぐっては、野田首相らによる関係閣僚会議を開催。形式的ながらも「ストレステスト」(耐性試験)1次評価結果や電力需給の見通しなどについて検討したとして、「政府の責任」(野田首相)で再稼働を強行しました。地元自治体への説明も枝野幸男経済産業相らが行いました。
政府は再稼働推進では“主導性”を発揮してきたのに、規制に関しては丸投げの姿勢です。安全判断について規制委の独立を首相がいうのは当然のことですが、独立の確保を口実に再稼働判断を規制委に丸投げする形で自動的にすすめていくことは許されません。
また、規制委の独立性を問題にするのなら、規制委を原発推進の環境省の下に置く仕組みこそ見直すべきです。
事前審査
規制委員会は来年7月までに新しい安全基準をつくり、審査を行うとしています。しかし、田中委員長は「(安全基準の骨格ができれば)事前審査的なことはやる」(3日)とのべ、安全基準ができる前から再稼働に向けた協議を電力会社と始める意向です。
安全確認だけで再稼働は判断しないと規制委はいい、政府は規制委の安全判断で再稼働へ電力会社の地元説明を認める―。責任を押し付けながら世論の批判を逃れ、再稼働を次々と自動的にすすめていくまやかしです。
2030年代に「原発ゼロ」を目指すとしながら、その経過では「重要電源」(藤村官房長官)として原発再稼働を認めていく政府の「エネルギー・環境戦略」の危険を改めて示しています。