2012年10月7日(日)
「想定外」でなく「想定せず」
二つの大震災は「人災」
原発下に活断層 研究者がシンポ
東日本大震災や阪神大震災は本当に予測できない「想定外」だったのか―。6日、神戸市内で開かれたシンポジウムで、活断層調査や地震予測に取り組む研究者らが原発推進のために地震や活断層の研究成果がねじまげられた事実を明らかにし、そうしたことはあってはならないと訴えました。日本地理学会と日本学術会議が主催しました。
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9月に発足した原子力規制委員会の委員の一人、島崎邦彦・元地震予知連絡会会長(地震学)が、「東日本大震災が『想定外』に至る分岐点」と題して講演しました。地震調査研究推進本部での長期予測が、原発の事情でねじ曲げられた経緯を告発。福島第1原発事故の前から東京電力が15・7メートルまで津波が遡上(そじょう)する可能性について試算を得ていたのに、「あくまで試算」「無理な仮定」といった理由で対策をとらなかった問題を批判しました。巨大津波の発生について「当時の科学からいっても不思議ではない」と述べました。
そして「私が怒りをもって思うのは、防災対策が穴あきになってしまって、たくさんの人が犠牲になったこと」と、科学的な予測がゆがめられた結果の深刻さを訴えました。
渡辺満久・東洋大学教授(変動地形学)は、福島第1原発事故は「想定できるものを想定しなかった人災。繰り返してはいけない」と断じました。渡辺氏をはじめ変動地形学の研究者が、福井の若狭湾の原発群などで敷地内の活断層の存在を疑わせる証拠を次々と示しても、大飯原発の再稼働が強行されたことについて「福島の教訓が生かされていない」と批判。活断層が「これまで動かなかったのは幸運」だとして、確率が小さな危険性であっても科学的に検討するべきだとのべました。
鈴木康弘・名古屋大学教授(同)は、1995年の阪神大震災について報告。震災前から活断層の存在は指摘されており、「十分に予測できた地震災害と言える。しかし、低頻度だからと危険を直視できなかったのが問題だ」と述べました。さらに、現在でも六甲断層帯が動く可能性があることや、被害が集中した「震災の帯」の地下に隠れている活断層の存在を指摘して、もう地震がこないというのは安全神話だと警告しました。
岡田篤正・立命館大学教授(同)は、近畿地方の活断層の分布の特徴を説明しました。そのうえで断層の真上の建物に大きな被害が出ると指摘。それを防ぐためにも詳しい活断層地図をつくって公表し、土地利用の適正化をはかることが大切だと述べました。
中田高・広島大学名誉教授(同)は、東日本大震災を引き起こした地震について、約500キロメートルの海底活断層が動いたとする見方を、立体視できる海底地形図を示しながら説明しました。固有活動を繰り返す活断層を考慮して、今後の地震を予測すべきだと述べました。