2012年10月6日(土)
主張
悪化する世界経済
逆行するIMF路線の転換を
世界的な景気後退がふたたび迫っています。そのなか、国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会が東京で開かれます。IMFは世界経済の悪化に大きな責任があります。悪化を食い止める第一歩は、IMFが押し付ける誤った処方箋を見直すことです。
行き詰まる緊縮政策
2008年のリーマン・ショックほど劇的でなくとも、いまの世界的な景気後退は深刻な問題をはらんでいます。バブル崩壊後、長期にわたって経済が低迷し、なお「デフレ」を脱することができない日本に似た状況が、世界に広がっています。IMFの主任エコノミストが、08年以来の世界経済の低迷は10年間にわたって続くとの見通しを示したといいます。
欧州の景気後退は、ギリシャやスペインなどの南欧から欧州全域に広がる様相をみせています。域内への輸出が落ち込んでいることから、成長のエンジンであるドイツ経済にも異変が出ています。
IMFが各国に迫っている緊縮政策が経済のさらなる悪化を招いています。国民は増税と暮らし切り捨ての政策に追い詰められ、ストライキが各国で起きています。危機は欧州統合の深化を促しているのに、財政赤字の削減を迫るだけでは出口は見えてきません。
米国でも来年1月からは増税や強制的な歳出削減が実施される見込みで、経済のさらなる悪化が強く懸念されています。深刻なのは、大統領選で政策論議が盛んに行われているのに、失敗が明らかな米国型資本主義に代わる経済モデルがみえてこないことです。
世界の成長率を引き下げるのが、けん引役を果たしてきた中国の減速です。中国経済が「軟着陸」するかどうかには、欧州向け輸出の減少ぶりも影響します。
危機に直面して、日米欧の中央銀行はカネを一段と垂れ流しています。行き場のないカネに景気を引き上げる効果はなく、投機をあおるだけだということは証明ずみです。米連邦準備制度理事会(FRB)が踏み切った苦し紛れの「量的緩和第3弾」は、打つ手のなさを浮き彫りにしています。
資本主義経済の矛盾が広範に表面化しています。モノをつくっても売れず、供給が需要を大幅に上回る過剰生産恐慌が世界的に深まっています。このなかで外需ばかりに依存しようとするのは無謀というしかありません。家計を温め内需を促す方向への転換が世界的にも必要になっています。
内需主導の成長が必要なとき、それに逆行しているのが国の借金の削減を最優先する緊縮路線です。“逆噴射”とでもいうべきIMF流のやり方は、各国で大多数の国民の貧困化と格差の拡大をもたらし、ぜい弱化した経済をさらに破壊しています。
日本は消費税増税中止を
日本に対するIMFの助言も、公的債務の削減こそが「優先事項」であり、消費税増税法の成立を「歓迎」したうえで、さらに「社会保障支出を抑え」るべきだというものです(今年の対日審査)。野田佳彦政権と息の合ったその路線こそが、日本経済を崖っぷちに一段と追いやっています。
消費税増税は百害あって一利なしです。求められるのは暮らしを最優先した“成長戦略”であり、消費税増税を中止させることが方向転換の第一歩です。