「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2012年9月30日(日)

主張

生活保護改悪案

新たな締め出しは許されぬ

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 厚生労働省が生活保護制度の大幅改悪案を公表しました。野田佳彦内閣が推進する社会保障制度改悪の具体化の一環です。家族の扶養義務を強めるなど生活保護から国民を締め出す仕組みを次々と盛り込んでいます。「健康で文化的な最低限度の生活」を全国民に保障した日本国憲法にもとづく生活保護制度の理念を覆すものです。年内にも最終案をまとめ、来年の通常国会に法案を提出する構えです。国民の生きる権利を破壊する大改悪は絶対に許されません。

受給妨げるハードル

 厚労省案は、生活保護受給者を扶養できないと答えた家族などに、福祉事務所の判断によって「扶養が困難な理由」を説明する責務を負わせる仕組みを明記しました。有名芸能人の親が生活保護を受給していた特殊な事例を、まるで制度そのものの問題のように攻撃した自民党議員や一部マスメディアの動きに便乗したものです。

 親子や兄弟姉妹などによる扶養の有無は生活保護を受ける要件ではありませんが、現在も保護申請時に福祉事務所から扶養義務者へ問い合わせがあるため、家族に知られることを恐れて、申請を辞退する人が少なくありません。扶養義務者に「説明責任」まで強いることは家族との関係をさらにこじれさせます。そのことを避けたい生活困窮者をますます生活保護制度から遠ざけるやり方です。多くの国民から「扶養義務強化」に批判が上がっていたにもかかわらず改悪案に盛り込んだ厚労省の姿勢は重大です。

 受給できた人にも厳しい内容です。「働ける」と判断された人には保護開始直後から「早期脱却」に向けた計画づくりが求められます。3〜6カ月で就職ができない場合は、希望しない職種や就職場所への変更まで要求されます。本人の事情を無視した低賃金・重労働の仕事や無理な転居などが強要される運用になりかねません。受給者に「健康管理」の責務を負わせるほか、生活費などの領収書保存や家計簿作成をさせて福祉事務所が掌握・管理するという“強権的手法”も提案しました。人間としての尊厳を奪い、人権を侵害する異常な方法です。

 生活保護を受給する人たちのなかで「働くことができる」といわれる人たちは、働きたくても大企業の人員削減やリストラで職場を追われたり、過酷な労働で心身ともに疲弊して健康が破壊され仕事ができなくなった人たちが大多数です。その人たちにたいして“力づく”で「就労・自立」を迫ることは、逆効果しか生まないことは明らかです。新たに導入する「中間的就労の場」という就労支援策も生活保護からの排除と連動させることは許されません。

貧困打開のため

 生活保護受給者が210万人を超えたのは経済状況の悪化と、そのもとで人減らし・リストラをすすめてきた政府・大企業の責任です。働く場を奪っておいて、「就労」を強い、不熱心だから保護を厳しくするというのは本末転倒です。

 欧州諸国の5〜9%と比べて1・6%の生活保護利用率しかないなど必要な人が利用できていない深刻な現状の打開こそ急務です。新たな「締め出し」は貧困による孤独死・孤立死を続発させる危険があります。改悪を許さず、貧困打開のたたかいが求められます。


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって