2012年9月22日(土)
自衛隊国民監視控訴審を開く
憲兵政治 再来させない
仙台高裁原告弁護団 実態解明求める
イラクへの自衛隊派遣に反対する活動を陸上自衛隊情報保全隊(当時)に監視された住民らが、監視の差し止めを求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が21日、仙台高等裁判所で開かれました。国は、監視行為の正当性を主張し、情報保全隊長(当時)を証人申請するなど、一審よりさらに強硬な態度をとろうとしています。
原告団長の後藤東陽氏と一審で損害賠償が認められた男性が意見陳述しました。
後藤氏は自らが体験した戦前の憲兵政治を語り、「再来は絶対に許せない。監視の全実態を明らかにするよう、国側に命じてください」と述べ、男性は、イラク派兵反対を訴えて、近所のスーパーでライブ活動をするなどのささやかな行動を監視され、本名と職業を調べられた恐怖を訴えました。
原告弁護団は、自衛隊という実力組織が、国民の平和運動や憲法擁護運動を監視したことは、憲法で保障された基本的人権を侵害すると指摘し、監視行為の実態解明と憲法判断を求めました。
また、国が一審と態度を一変させ、監視行為の記録文書作成を“認めないが争わない”としたことについて、認否を明確にするよう要求。監視行為の正当性を主張する国に対し、情報収集の手段や方法を明らかにするよう求めました。
同訴訟は、情報保全隊に監視された東北地方の住民が監視の差し止めと損害賠償を求めたもの。3月26日に仙台地裁は、監視の差し止めは却下しましたが、原告5人に損害賠償を認めた判決を出し、原告、被告双方が控訴していました。
当時の保全隊長が証言へ
21日、仙台高裁での自衛隊の国民監視差し止め訴訟の第1回口頭弁論で、国側は、当時の陸上自衛隊の情報保全隊隊長を証人に申請しました。今後、元隊長の証言や新証拠などによって保全隊の活動がいっそう明るみに出る可能性が出てきました。
被告の国側が証人に申請したのは、日本共産党の志位和夫委員長が2007年、会見で明らかにした陸自情報保全隊の内部文書の作成時期に隊長だった鈴木健氏。現在は、東芝の子会社の社員です。
この日の口頭弁論で、原告側も鈴木氏を証人申請。他にも現在の自衛隊情報保全隊司令の立花尊顕陸将補ら計6人の証人採用を求めました。
12月10日の第2回口頭弁論で、鈴木氏らを証人にするか決まる予定。
閉廷後の記者会見で、原告側弁護団事務局長の小野寺義象弁護士は「当初から、保全隊関係者の証人尋問を強く求めてきたが、一審では1人の尋問もないまま終わった。鈴木氏の尋問は、大きな成果だが、国側の表面的ないいかげんな尋問に終わらせてはいけない」と語りました。
また原告側は、この日の裁判で本紙4日付が報じた情報保全隊作成の2010年12月の監視記録について証拠申請。
弁護団の内藤功弁護士は「最初に発覚した監視記録から6年後につくった記録は監視対象が広がっており、違憲性、危険性が増大している。今も監視が続いており、裁判所には歯止めをかけていただきたい」と情報保全隊の監視活動の危険性を訴えました。