2012年9月19日(水)
原発事故 福島のいま
除染が進まない
生活圏着手ごく一部 国からは音さたなし
東京電力福島第1原発事故から1年半―。放射性物質を取り除く除染は、福島県ではどこまで進んだのでしょうか。政府が目標の節にする2013年8月末まで、1年弱になりました。しかし、生活圏の面的除染はごく一部地域を除いて始まっていないのが実情です。除染の遅れ打開は政府の責任です。自治体からは政府が本気になって、その責任をはたすことを求める声があがっています。(柴田善太)
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政府の除染の基本目標は、▽13年8月末までに住民の年間被ばく線量を、11年8月末と比べて50〜60%減少させる(物理的・自然的減少が40%、除染で10〜20%)▽長期的には年間被ばく線量を1ミリシーベルト(1時間換算で0・23マイクロシーベルト)以下にするというものです。
国が直轄で除染を行う11の除染特別地域で本格的除染(生活圏の面的除染)が始まったのは田村市のみ。拠点地除染も3地域で終わっただけです。(9月7日現在)
仮置き場
市町村が除染を行う県内41の汚染状況重点調査地域での住宅除染は、14地域の3403戸しか終わっていません。工事発注も計画数の約2割の到達。公共施設の除染は2287カ所の計画が上がっていますが、終わったのは975カ所にとどまっています。(7月末)
除染の遅れにはいくつかの要因があります。
一つは汚染土の仮置き場の確保の難しさ。特に住宅密集地では難しく、市町村は仮置き場を行政区ごとに設置する方向を出したり、福島市では住宅敷地内保管も行われています。
仮置き場確保が難しい背景には、放射性物質に対する科学的な知識の一致点が確立されていないことや、“原発安全神話”を振りまいてきた政府が仮置き場の安全性を説明することへの不信がからんでいます。
遅れの二つ目の要因は、財源がらみで政府と地方の除染方法協議に時間がかかる問題です。市町村による除染費用は、政府が資金を出して県につくった基金から、市町村に交付されます。除染方法の類型、基本額が示されており、それを超過する場合は環境省との個別協議になり、承認されなければ交付金はおりません。
「山の脇の住宅の場合、山と住宅の間に側溝を掘って敷地を分けないと線量が落ちない。費用を認めるように、半年近い事前協議を経て、7月に正式協議に上げたが何の返答もない」(福島市除染課)など、市町村から環境省への不満は強いものがあります。
国の責任
これほどの難事業である除染が必要になった原因をつくったのは東京電力と政府です。除染は本来、この両者が責任を持つ問題です。市町村が行う除染が国の法定受託事務となっているのもそのためです。
福島環境再生事務所(環境省の地方機関)の大村卓所長は取材に対し、今まで本省頼みで対応の遅れがあったとして、「4月から職員も200人、外部協力者を入れると約300人に増えた。現場の判断を尊重する流れをつくりたい」と話しました。
除染特別地域と汚染状況重点調査地域 除染特別地域は国が計画を策定し除染を直轄で進める地域。事故発生から1年間の放射線積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがあるとして政府が避難指示を出した地域で、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村の全域と田村市、南相馬市、川俣町、川内村の一部。
汚染状況重点調査地域は、平均的な放射線量が1時間当たり0・23マイクロシーベルト以上の地域を含む市町村。福島県の41自治体を含む8県の104自治体。市町村が計画を策定し国が財政援助します。
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