2012年9月17日(月)
イスラム冒とく映画問題
大使館襲撃 批判の声
“怒りの表現は平和的に”
【カイロ=小泉大介】米国で制作されたイスラム教預言者冒瀆(ぼうとく)の「映画」をめぐり、中東各国で米大使館などへの襲撃事件が多発するなか、一般のイスラム教徒の間では暴力行為を批判する声が高まっています。一部暴徒の行動が大衆的支持を得ていない実態が鮮明になっています。
大使館襲撃に関してエジプトの若者はこの間、ツイッターで「『映画』が犯したよりも大きな罪ではないかと思ってしまう。怒りは当然だが、もっと外交的な対応ができないものか」「欧米ではこれまでにも『アラブ』や『イスラム』に誤解があったのに、不幸にも、襲撃の事態はそれにさらに拍車をかけてしまったのではないか」などの声を次々と上げています。
エジプトの著名なジャーナリスト、ハミド・カンディル氏も15日付地元紙で「怒りは正当な方法で表現すべきであり、大使館を襲撃し人命を奪ったり、国旗をもぎ取り燃やしたりすべきではない。われわれは誤った対応によってイスラムの大義を失ってはならない」と表明しました。
今回の暴力拡大の背景に、エジプトやチュニジアで昨年初めに起こった「革命」後、イスラム主義勢力が伸長したことがあるとの見方も出ていますが、当事者は冷静な対応を訴えています。
エジプト最大の政治勢力となったイスラム主義組織・ムスリム同胞団のシャーテル副団長はこのほど「米国人に対する手紙」を発表。そのなかで「新しいエジプトでは、人々は自らの怒りを自由に表現する権利を持つ。しかしそれは平和的に、法律の枠内で行われなければならない」と強調しました。
チュニジア第1党のイスラム主義政党アンナハダの青年グループは15日の声明で「われわれはすべてのチュニジア人と若者に対し、暴力により革命を挫折させ、国民分断の種をまこうとする試みを許さないよう呼び掛ける」と表明しました。