2012年9月14日(金)
きょうの潮流
ちょうど200年前の9月14日、ナポレオン軍はモスクワに入城しました。しかし、街の大半が火事で焼けます。宿も食料も欠くナポレオン軍は、1カ月あまりで撤退に追い込まれます▼ナポレオンは、自分の宣伝にたけた人でした。戦場での成功を大げさに伝え、失敗は他人のせいにしてしまう。絵、彫刻や硬貨に雄姿を描かせ、自分を伝説にかえる…▼彼は、フランス革命を輸出する戦争で自由・平等の旗手のようにふるまい、国内では自分に反対する新聞の発行を禁じるなど独裁者になりあがります。1804年、皇帝に▼革命の守り手ナポレオンへの期待が裏切られた、作曲家ベートーベンの怒りの言葉が有名です。「彼もまた人間のすべての権利を足元に踏みにじるのか。自分の名誉心にのみ仕えようとするのか。すべての他の者よりも一段高いところに自分を置くだろう」▼ナポレオン後、広く人に伝える手段を利用し自分を一段高いところの大物のように宣伝する、独裁者ゆずりの政治家が相次いで登場します。「日本維新の会」の橋下大阪市長も、その末端の一人でしょう。過激な発言を絶やさない。テレビ・新聞がもてはやし、英雄扱いする。“人気”をあてこみ群がる政治家に、政見の踏み絵をふませ、認めたら仲間にしてやると大物ぶる▼盛んに「民意」を口にしながら、市民から募った意見に「政策は左右されない」と語り、市民に奉仕する職員を市長の下僕にかえる橋下氏。ベートーベンの怒りの言葉は、彼をも撃ちます。