2012年9月12日(水)
きょうの潮流
2年前、ある党員の方からお便りをいただきました。近所の80代の読者夫妻が、2日分の「潮流」欄を切り抜いてとっておられ、「書いた記者によろしく」と話していた、というのです▼その2日分の本欄は、かつて尖閣諸島を開拓して事業を営んだ、古賀辰四郎・善次の親子について書いていました。読者夫妻は、善次氏の親類筋にあたる人たちでした▼2人が切り抜いた本欄は、1920年に当時の中国政府から善次氏らに贈られた感謝状も紹介しています。前年、尖閣諸島の沖で中国の漁船が難破しました。31人の乗組員を助け、もてなしたのが、善次氏や石垣島の人々です▼中国の感謝状は、遭難した所を「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島内」と記していました。中国も尖閣を日本領とみなしていた、証拠の一つです。50年後、古賀氏に縁のある人誰もが驚いたでしょう。だしぬけに中国が、“尖閣は中国領”といいだしたのですから▼諸島は1970年代、古賀氏から人手に渡っています。おもな5島のうち、国有地の大正島以外の4島です。政府は昨日、うち3島を国有化しました。国が借り上げアメリカ軍に提供している久場島(くばしま))を除く、魚釣島、北小島、南小島です▼が、一件落着とはいきません。なおも自分の領土という中国に、確かな証拠や史実にもとづき日本の立場をどう主張してゆくか。“領土問題は存在しない”といって、正論を堂々と伝える外交努力を怠り、あげくに両国民の過激な行動を招いたりすれば、逆効果です。