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2012年9月11日(火)

東日本大震災から1年6カ月

生活支援 強化早く

孤独・絶望死相次ぐ

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 大震災から1年半、被災地ではいまなお生活再建の見通しがなく、将来不安や経済的な困窮におびやかされている人が少なくありません。「震災関連死の増加は阪神大震災をしのぐ勢いだ」(室崎益輝日本災害復興学会会長)と専門家は指摘。抜本的な生活支援の強化が急がれます。宮城県石巻市を歩きました。(本田祐典)


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(写真)仮設住宅に駆け付けた救急車やパトカー=9日、宮城県石巻市

宮城・石巻

 仮設住宅の玄関をたたいて「こんにちはー」と声をかける若者ら。薄暗い室内から姿を見せた高齢の女性の顔がほころびます。

 石巻市を中心に支援活動するオープンジャパン(吉村誠司共同代表)は仮設住宅の独居高齢者に、米と支援者のメッセージを届けて話を聞く「サンライス元気村」プロジェクトに取り組みます。

 8、9の両日は4団地約120人を訪問。▽室内がゴミだらけで床が汚れ、ハエが発生している▽「胸が苦しく、吐き気がする」と訴えた▽騒音など隣人間のトラブルが起きている▽会話が成立しない―などの事例がありました。

 ボランティアに通う都内の会社員、藤原卓也さん(46)は、「前向きな動きも見えてきた半面、震災のショックや生活不安から精神安定剤や睡眠導入剤に頼る人も多いなど、楽観できない」。

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(写真)独居高齢者を訪問し、話を聞くボランティア=9日、宮城県石巻市

動機に経済問題

 仮設住宅では孤独死や自殺が相次ぎ、住民の不安が募っています。

 1142戸が並ぶ石巻市の仮設開成団地は9日夕、救急車1台とパトカー2台が駆けつけて騒然としました。

 遠巻きに見ていた女性(55)は、「また誰か亡くなったの?」と厳しい表情。幸い搬送の必要がなく救急車が立ち去ったあとも、住民らはしばらくその場から動かず、口々に不安を訴えました。

 この団地では震災から半年たった昨年9月11日、室内で死後約1週間たった男性の遺体が発見されました。男性の腹部には複数の刺し傷があり、自殺とみられています。

 大震災にかかわる自殺者は判明しているだけで73人(内閣府まとめ、8月23日現在)。自殺に至る動機は経済・生活問題と健康問題がそれぞれ17件と最も多くなっています。

 石巻仮設住宅自治会連合会の山上勝義副会長は震災後、友人3人を失いました。津波で壊れた家で暮らし続けていた2人がそれぞれ首をつって自殺。もう1人の友人も飲酒に走った末、仮設住宅で遺体で発見されました。

 山上さんは訴えます。「義援金も滞り、仕事にありつけず、明日をも知れない生活を強いられている。このままでは、自殺や自暴自棄になって病気を放置する“絶望死”が多発する」

福祉が機能せず

 岩手、宮城、福島の東北3県では、これまでに失業手当の延長給付が終わった約2万人のうち、8割にあたる1万6380人(8月17日現在)が給付終了時点で就職できていません。

 石巻市内の求人は建設など短期の肉体労働が多く、女性や年配者の働き口が少ないのが現状です。母子家庭で小学生2人を育てる同市の女性(41)は、「子育てしながら働ける場所が見つからず貯蓄を崩している」と。

 国は生活費の支援として被災者向けの貸付制度を示しますが、利用はわずか。厚生労働省の担当者も「返す見込みがない人は使いづらい」(地域福祉課)。

 生活保護も十分に機能していません。生活に欠かせない車の保有を「特別な場合を除いて原則は認めない」(石巻市保護課)とされているからです。

 冒頭のサンライス元気村でボランティアのまとめ役を務める中村真菜美さん(26)は、訪問活動の年内終了に向けて準備しています。

 「年金が2、3万円と少なく生活できないといった問題は、被災地を震災前の状態に戻すだけでは解決しない。長期的に生活を支えるのは福祉の役割で、その根本的な強化こそ求められます」


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