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2012年9月9日(日)

主張

東日本大震災1年半

「いのち守る」を復興の基盤に

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 日本の観測史上最大のマグニチュード(M)9の揺れと巨大津波によって1万5千人を超える死者を出した東日本大震災から11日で1年半です。依然2800人以上が行方不明です。まちを根こそぎ奪った地震と津波のすさまじさを示しています。

 東京電力福島原発事故も重なった「複合災害」は東北3県を中心に34万人以上に避難生活を強いています。被災者の生活を支えるとともに本格的な復興へ加速することが重要になっています。

健康とくらし支えてこそ

 被災地は2度目の夏、またも厳しい暑さに苦しめられました。強い日差しが仮設住宅の屋根を熱し、室温は40度近くに達したところもありました。電気代節約のためエアコンなどの冷房は最小限に我慢する人たちもいました。熱中症で搬送されたお年寄りも少なくありません。

 短い秋の後は冬が来ます。長びく仮設での生活は住民の心と健康を破壊します。被災者が安心してくらせるよう物心両面でのきめ細かな支援の継続は不可欠です。

 被災者の命と健康を守ることが急がれます。住まいと仕事を失い先が見えないくらし、親しい人を失った深い悲しみなどが蓄積され被災者の多くは心身ともに疲労が重なっています。被災者の生活再建を急ぎ、健康を保つ取り組みは緊急性を増しています。新たに介護認定されるお年寄りも被災地で増加しています。

 ところが国は、医療・介護の窓口・利用料負担や保険料を減免する特別措置を、原発事故避難指示地域を除いて9月末で取りやめる方針です。あまりに冷たい、逆行した政策です。多くの自治体は独自努力で減免を続けますが大変な財政負担です。「救われた命」が失われないようにするため国としての支援こそが必要です。

 生活の基盤である住まいの再生は進んでいません。津波を避ける高台への移転の公的支援についても国がさまざまな制限を設けているためです。住宅再建が大幅に遅れれば、地域再建もできません。公的支援を思い切って拡充することで住宅再建を加速し、地域の再生をはかるべきです。災害公営住宅の建設も急がれます。入居の際には、高齢者などが孤立しない工夫が求められます。

 仕事と雇用の確保は急務です。建設関連など短期的な求人は増えたとはいえ不安定です。水産加工など地域に根ざした産業による雇用創出が重要です。地域経済を支える中小企業への支援や漁港の再建などには特別な手だてをとるべきです。すべての被災者の生活と生業を支援し、地域社会全体を再建する復興に力を注ぐときです。

原発からの撤退こそ

 原発災害は、16万人以上が県内外に避難を続けるなど福島県民に甚大な被害をもたらしています。

 東京電力の賠償もまだまだ不十分です。事故収束の見通しだけでなく、放射能で汚染された地域の除染なども遅々としています。住民は地域コミュニティーや家族もばらばらにされ、将来への展望すら見えません。

 原発を「国策」として推進してきた政府の責任があらためて問われます。いまこそ原発からの撤退を決断し、反省の上にたった被災者への補償と地域再生に全力をあげるべきです。


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