2012年9月3日(月)
地方発
地元の駅 使いやすく
バリアフリー化へ住民が運動
高齢者や障害者をはじめ、国民の誰もが使いやすい公共交通機関や建築物の整備促進をめざすバリアフリー新法の基本方針が2010年度末に改正され、利用者3000人以上の全駅で段差解消、トイレ設置などを目標にしています。各地ですすむバリアフリー化の活動を千葉県船橋市と愛知県安城市から報告します。
南口の6段階段 日常生活の障害に 解消へ行政も動いた
千葉・下総中山駅
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「一日も早く駅階段の段差を解消してください。これでは、せっかくのエレベーターが利用できません」―。
千葉県船橋市のJR総武線・下総中山(しもうさなかやま)駅で、地元住民のバリアフリー化を求める粘り強い活動が行われています。同駅南口には、やや急な階段(6段)があります。高齢者や障害者、ベビーカー利用者らから切実な改善の声があがっています。
同駅は市川市との境界に位置し、1日約2万2000人が利用します。駅の南側地域には医療施設、整骨院などに加え、建設後、30〜40年のマンションが多数あります。高齢者人口が多い地域です。昨年、市民の要望で実現したエレベーターも南口からは足の不自由なお年寄りなどは使用できません。
足の悪い高齢者不便
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「階段の中央部分にだけしか、つかまれる手すりがないのでのぼるときに不安です。ここを使わないとかなりの遠回りになります」と小栗原住宅に住む高橋和枝さん(85)はいいます。高橋さんは、ひざの関節を痛め歩行が困難です。
駅の近くに、社会福祉施設の「ワークアイ・船橋」があり、約30人の視覚障害・肢体障害者の人たちが通っています。理事長の金子楓(かえで)さん(73)は「階段は下りるときが、つまずきやすく危険ですね。車いすの通所者はいったん駅北口にでて、隣のスーパーのなかを通り、迂回(うかい)しています」と話します。
同地域で女性たちが声をあげました。「下総中山駅のコンコース」南側入り口の6段の階段が、日常生活の上で障害となっている、とJR東日本・千葉支社に訴えました。2007年9月のことです。それは前年に施行されたバリアフリー新法にもとづく実現化の要望でした。
新日本婦人の会船橋支部「ききょう班」の人たちです。日本共産党の中山後援会と協力してとりくみました。
当時のことを村田芙規子さん(78)は「駅周辺の移動しやすいまちづくりに役に立つ法律だと思いました。高齢者や障害者だけの問題ではないと行動しました」と語ります。
リフトの設置を提案
昨年7月15日には、党中山後援会、新婦人、車いすの人や建築士が現地調査をしました。日本共産党の丸山慎一県議、金沢和子市議、松崎さち地区青年部副部長も参加しました。今年1月にも、市の担当者もいっしょに調査し、バリアフリー化の要請をしました。
金沢市議は議会で2度にわたって、JRに階段のバリアフリー化を求めるよう市に要請しました。こうしたなか、「技術上むずかしい」といっていたJRも、その必要性を認めるようになりました。
地元住民とともに活動にとりくんでいる丸山県議は、「専門家の協力もえて小型のリフト(昇降機)の設置を提案したいと思います。隣の西船橋駅南口に住民の要望が実り、エレベーター設置が決まりました。下総中山駅でも市川の市民もふくめ、手をつなぎ実現したい」といいます。(小平男)
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南北それぞれにエレベーター設置 トイレ階段に手すり
愛知・新安城駅
「手すりをつくってもらったおかげで、安心してトイレを利用することができます」と、視覚障害者の女性(64)=愛知県安城市在住=はうれしそうに語ります。
利用率が高い駅改善
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今年3月、名古屋鉄道名古屋本線の新安城駅南口トイレの階段に、手すりが設置されました。同駅は、接続する名鉄西尾線の起点でもあり、1日約1万8000人が利用しています。
トイレは改札口の外に設置され、利用するためには階段を2段上がる必要があります。階段の周囲にはつかまるものが何もなく、「利用率が高く、これまでも市に改善を求める声がたくさん寄せられていた」(トイレを管理する市の担当者)状況でした。
前出の女性は目と足が不自由で、何度も足を踏み外しそうになった経験があり、今年初め、日本共産党の深谷恵子市議に相談しました。深谷市議は早速、市に改善を申し入れました。
これを受け、市は3月1日に工事を開始、23日に完成させました。さらに、弱視の人でも階段が見やすくなるよう、階段の側面にオレンジ色の塗料が塗られました。女性は「相談してこんなに早く工事をしてもらえるとは思いませんでした。助かります」と話します。
日本共産党市議団は、同駅のバリアフリー化にも大きな役割を果たしました。
同駅の改札口は地下1階の自由通路に面して設置されているため、地上と地下を階段で上り下りする必要があります。
深谷議員は議会で3度にわたって、名鉄にエレベーターの設置を求めるよう市に要請するとともに、2009年7月に宮川金彦議員とともに名鉄に直談判しました。これに対し、名鉄側は「10年度中に実施する」と回答。同年12月に北口、11年2月に南口に、それぞれエレベーターが設置されました。
名鉄西尾線・碧海古井(へきかいふるい)駅のトイレ設置(11年1月)も住民世論と党議員の奮闘で実現しました。市内駅で唯一トイレがなく、利用者が近くのお店に飛び込んでトイレを借りるケースもあり、地元3町内会の会長が連名で名鉄本社に要望書を提出していました。
宮川市議は、09年6月議会で市に名鉄にトイレの設置を働きかけるよう要請するとともに、名鉄が応じない場合は市の責任で設置するよう提案。「市が設置することも検討する必要がある」との答弁を引き出しました。
ホームへ51段の階段
党議員団はいま、名鉄西尾線・南安城駅へのエレベーター設置を強く求めています。高架駅のため、地上からホームに移動するためには階段を51段上がる必要があります。同駅の1日当たりの乗降客数は3894人(11年度)。改正されたバリアフリー基本方針の対象駅です。
宮川市議は「利用者の安全にかかわる問題です。今後も粘り強く市や名鉄に働きかけ、バリアフリー化を実現したい」と意気込んでいます。 (愛知県・広瀬幸男)
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段差解消した駅 78%に
バリアフリー新法「高齢者、障害者等移動円滑化促進法」は高齢者や障害者をはじめ、誰もが使いやすい施設の整備を促進するものとして2006年に施行されました。
日本共産党は移動の自由と安全確保が国民にとって基本的な権利であることを明記し、既存施設も含め事業者にバリアフリー化を義務づけるなど実効ある改善案を提案しています。
昨年3月のバリアフリー基本方針の改正により、利用者5000人以上(1日)から新たに3000人以上のすべての駅で段差解消、エレベーター、トイレなどの設置を行います。(20年度までの整備目標)
国土交通省調べでは、10年度末までに段差解消した利用者3000人以上の駅は2686駅(78%)です。一方で、ホームからの転落防止ドアや可動柵の設置は全国で、わずか519駅(12年3月末)で全駅の約5%にとどまっています。