2012年9月3日(月)
スペインの「消費税」増税
文化の衰退招く懸念
チケット課税8→21%
スペインで1日、財政健全化に向けた緊縮策の一環として、付加価値税(日本の消費税に相当)が引き上げられました。多くの専門家はこの増税による消費の落ち込みを予想。品目別では映画や音楽など文化関連の税率が2倍以上になったことから、文化の衰退と雇用の破壊につながると強い懸念の声が上がっています。(島崎桂、菅原啓)
ラホイ国民党政権が打ち出した今回の増税策は、付加価値税の一般税率を現行18%から21%に引き上げるもの。パンや小麦粉など基本的食料とされる品目は最低税率4%が維持されましたが、その他の食料品や交通料金は軽減税率8%が10%に引き上げられました。
学用品も21%
学用品はこれまでの最低税率扱いが廃止され、一気に税率が21%に引き上げられ、父母の間からは悲鳴の声も上がっています。
地元紙メノルカ(電子版)によると、1日には多くのスーパーや小売店が付加価値税を上乗せしない「セール」を実施。増税前に仕入れた商品在庫があるため、消費者離れにつながる増税分の値上げを回避していますが、それも「今のところ」の対応で、今後の値上がりと消費の低迷は必至と報じています。
エウロパ・プレス(電子版)は、夫婦子ども2人世帯では、年間475ユーロ(約4万7500円)の負担増になるとの専門家の推計を紹介。また、理髪料金も8%から21%になることから、今後2年間で4万の理髪店が廃業に追い込まれかねないと警告しました。
映画や音楽など文化関係ではすでに中央政府の予算が15%削減されているのに加えて、チケットなどの売り上げにかかる税率が8%から21%に引き上げられます。
雇用失われる
ロイター通信によると、文化事業の経済規模はGDP比で4%、約55万人の雇用を支えています。スペイン文化産業経営者協会連合(UAEICE)は、増税によって4300万人の観客減、5億3000万ユーロ(約530億円)の収入減を予測。4500人の雇用が失われ、音楽、映画、演劇関連会社の2割が倒産すると訴えてきました。
スペイン作家作曲家協会(SGAE)は、「増税はスペインの芸術の発展にとって主要な障害となり、経済や雇用に大きな潜在力を持つ文化分野に深刻な打撃を与えるものだ」と批判しています。
増税で歳入増を見込んでいることへの疑問の声もあり、英国の世界的な会計事務所プライスウォーターハウスクーパースは「増税により、1000万ユーロ(約10億円)近くの歳入減になる」との試算を発表しています。