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2012年8月27日(月)

「住民不在」はね返そう

再建・復興の課題探る

専門家ら仙台でセミナー

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 再建・復興に向かう被災地の現状と課題をつかもうと、住民主体のまちづくりを目指す新建築家技術者集団(新建)が26日までの3日間、「建築とまちづくりセミナーin仙台」を開きました。全国から専門家ら約170人が参加。講座やパネルディスカッション、岩手・宮城両県の被災地視察から見えた課題とは―。

 (本田祐典)


 新建の本多昭一代表幹事(京都府立大名誉教授)は主催者あいさつで、復興の現状を「住民の要望がないがしろだ」と指摘。震災に乗じて利益拡大を狙う惨事便乗型資本主義などの動きに対抗するには、「地域コミュニティーの力を強めて、住民の意見に反する復興を許さないことが大事だ」と語りました。

住まいの再建

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(写真)自治会の取り組みを聞く参加者=25日、仙台市太白区の、あすと長町仮設住宅

 仙台市が集団移転を求める若林区荒浜の視察では、東北工業大の新井信幸講師が「移転を市議会で決め、決定のプロセスに住民が全く参加できていない」と、住民不在のまちづくりの実態を報告。

 工務店の全国ネットワーク「工務店サポートセンター」の和田正光執行役員は、消費税増税について「駆け込み需要で建築資材が値上りし、職人も不足する」と、増税前から深刻な影響が出るとしました。

 南三陸町で、再建した製材所を案内した丸平木材の石田剛営業部長は「地元産材利用への補助金を強めてほしい。外国産材の方が安くては被災者に使ってもらえない」と要望。

 日本共産党の斉藤信岩手県議は、国の生活再建支援金(最大300万円)が少なく、県と自治体が共同で100万円上乗せすると紹介。「国が最低でも2、300万円増額しなければ再建はすすまない」と強調しました。

生業と暮らし

 福島大の鈴木浩名誉教授は、被災地の基幹産業で生業(なりわい)としての農・漁業を国が軽視してきた歴史を踏まえ、「復興のなかで一次産業の振興に手を打つように転換して、新しい枠組みを用意できるかが重要だ」と提起しました。

 仙台市の山田文雄復興推進局長は、市内の有効求人倍率は建設・警備など復興関連の短期の仕事が高水準の一方、事務職は0・2〜0・3倍で長期の仕事がないことを示しました。

 斉藤岩手県議は「被災者の命と暮らしが脅かされている」とし、同県内の失業手当が切れた2433人(7月20日現在)の3分の2、1620人が未就職で収入がないと話しました。

コミュニティー

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(写真)被災した宅地を前に、復興のあり方を議論する参加者=26日、宮城県石巻市

 宮城県石巻市で設計事務所兼自宅が被災した佐々木文彦さん(新建宮城支部幹事)は被災地域を案内し、集団移転の住民合意づくりを報告。集落の世帯主でつくる自治組織「契約講」が残っていたことが、避難所の運営やまちづくりで力を発揮したと語りました。

 仙台市最大の「あすと長町仮設」(223戸)を案内した、飯塚正広自治会長は「さまざまな地域から来た住民のコミュニティー形成に苦労した」。築いたコミュニティーを維持して災害公営住宅に入居したいと、市への要望を訴えました。

福島の困難は

 福島大の丹波史紀准教授は、原発事故特有の困難として▽自治体を越えての広域避難▽帰還の時期を見通せない長期避難▽仮設住宅、借り上げ住宅など避難生活の多様化―の3点を示しました。

 浪江町復興推進課の玉川啓主幹は、「住まい、町、仕事が何年後にどうなるのかという判断材料が提示できていない。それが町民の苦痛になっている」と話しました。

 セミナーの成果は、新建が今後、声明にまとめて建築団体や関係省庁に届けます。今村彰宏事務局長は、「引き続き、相談活動などを積極的にすすめる。住民の生活再建を最優先する視点で復興する仕組みづくりを支援したい」と話しています。


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