2012年8月27日(月)
山本さん死亡のシリア・アレッポ
病院まで標的 政府軍が連日大攻撃
人権活動家が証言
【カイロ=小泉大介】日本人ジャーナリストの山本美香さんが、アサド政権派民兵のものとみられる凶弾に倒れたシリア第2の都市アレッポでは、政府軍が7月末以降、戦闘機も動員した大規模攻撃を連日行い、負傷者を手当てする病院まで標的にしています。同地の人権活動家が25日、インターネットを通じた本紙の取材に対し、その実態を証言しました。
アレッポの男性人権活動家、サフィ氏(27)は、「この2週間で、公立と私立合わせて3病院が爆撃の標的となりました。そのうち一つは、手術室や集中治療室が完全に破壊され、政府軍の攻撃で負傷した住民の治療に深刻な影響が出ています」と告発しました。
そのうえで「ここでは地上だけ見れば(反政府武装組織の)自由シリア軍が優勢ですが、政府軍は戦闘機や軍用ヘリコプターを使用し空から無差別攻撃を繰り返しており、状況は予断を許しません」「日本人記者が殺害されたことは、政権がもはや武装勢力とジャーナリストや女性、子どもなど民間人をまったく区別しない血塗られた存在となっていることを示しています」と語りました。
アレッポにおける政府軍の無差別攻撃については、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが23日、現地調査にもとづく報告書を発表。「圧倒的多数のケースにおいて、民間人の死傷者は国際人道法に違反した政府軍の攻撃によるものだ」として、その実態を詳細に明らかにしました。
同報告も、政府軍が病院を意図的に標的にしていることを強調し、医師たちが、軍の攻撃の危険があるため患者に応急手当てを施した後にただちに違う場所に避難させなければならないと語ったとしています。
アサド政権は「外国に支援されたテロリスト」の掃討を口実に、さらなるアレッポ総攻撃の構えも見せています。サフィ氏は今後について、「反政府武装勢力の反撃のいかんにかかっていますが、現状では、人民の革命が成就するにはしばらく時間がかかるでしょう」と話しました。