2012年8月27日(月)
主張
消費税増税の条件整備
欠陥税の増税は中止しかない
民主党の税制調査会は21日、来年度税制の基本方針をとりまとめました。所得税・資産課税の見直しや消費税の逆進性対策にとりくむとしています。消費税増税を実行するための条件整備です。
解決できない根本矛盾
民自公3党が強行した消費税増税法は逆進性対策を先送りし、富裕層へのわずかな増税も削除したむきだしの庶民増税法です。
所得が低い人ほど負担が重くなる逆進性は、消費税の根本欠陥のひとつです。民主党政権も消費税の逆進性を否定できず、当初の政府案は「低所得者に配慮した再分配に関する総合的な施策を導入する」としていました。
これが民自公3党の談合によって検討課題に格下げされ、先送りされました。所得税が控除額より少ない低所得者に現金を給付する「給付付き税額控除」や一部品目の消費税率を一般の消費税率より低くする「複数税率」を掲げていますが、何も具体化できていません。3党間の議論がまとまる見通しも立たない状況です。何より、大増税を前提にして逆進性を多少緩和する策を取ったとしても問題の解決にはなりません。
これらの対策が取られても消費税のもうひとつの根本欠陥である中小企業の「損税」は少しも緩和されません。「損税」は主に中小企業が販売価格に消費税分を転嫁できずに身銭を切らされることによって生じます。財務省主税局出身の森信茂樹中央大学教授は「益税が存在しないどころか、転嫁できない損税が生じている」とのべ、「損税」が約5千億円に上るという試算を示しています。
当初の政府案には「税体系全体の再分配機能を回復」させるとして、わずか5%ながらも所得税と相続税の最高税率を引き上げる条項を盛り込んでいました。民自公3党の談合は、これらの条項すらすべて削除してしまいました。
政府の「経済財政白書」(2009年)さえ「OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最も小さい」と認めるほど、税制の所得再分配効果は低下しています。白書はその原因として「所得税の最高税率の引き下げや税率のフラット(平たん)化」をあげています。
所得税の最高税率は1986年の70%から現在の40%へ大幅に引き下げられ、税率のきざみは15段階から6段階に緩和されました。それに加えて金融所得の超低税率があります。富裕層ほど所得に占める株取引のもうけなどの割合が大きく、財務省の資料によると所得100億円では株式譲渡所得が9割を超えています。株式譲渡所得の税率は分離課税で20%に抑えられ、さらに証券優遇税制で10%に減税されてきました。
政府の方針通りに所得税の最高税率を5%引き上げ、13年末までの証券優遇税制を延長せずに20%に戻しても“焼け石に水”です。
消費税の増税に頼らず
消費税増税は暮らしと経済を破壊し貧困と格差を拡大します。消費税という欠陥税を倍増し、逆進性と「損税」の矛盾を激化させることそのものを中止すべきです。
消費税増税に頼らず、国民の所得を増やす経済改革とともに、むだの一掃と大企業・富裕層への適正な課税、累進課税の強化を段階的にすすめ、財政危機を抑えながら社会保障の再生・充実を図る道への根本転換が求められます。