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2012年8月27日(月)

保険会社参入に道 医療・介護・保育の事業

金融庁審議会が検討 公的保険を縮小・解体

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 消費税増税法と一体で社会保障を解体に導く「社会保障制度改革推進法」が成立する中、民間保険会社が医療・介護・保育などの事業への参入ができるように道を開く動きが金融庁のもとで進んでいます。公的保険を縮小・解体し、私的保険の拡大を進める動きです。


 検討を進めているのは同庁の金融審議会(首相などの諮問機関)の「保険商品・サービス検討のあり方に関する作業グループ」(座長・洲崎博史京都大学教授)。現在、民間保険の定額保険契約では「金銭」の給付しか認められていませんが、医療・介護サービスや保育サービスといった「現物」の給付を認めることを議論しています。「現物」給付の形で事業参入し、もうけ口を増やそうというものです。同時に、保険会社の子会社が幅広く介護事業所や保育所を運営できるよう規制を緩和して、保険会社による事業所の“囲い込み”を進め、保険料を払った人にだけ保育所への優先入所権を与えることも論じています。

 作業グループのメンバーには、学者、日本経団連、連合の代表のほかにコンサルタント会社の社員などが並び、生保・損保会社の代表がオブザーバーとして参加しています。

 6月7日に開かれた作業グループの第1回会合では、保険協会の代表(明治安田生命保険相互会社調査部長)がこうした規制緩和を強く要望。「社会保障の見直しの話なども出ていますが、今後は私的保障に対するニーズがますます高まってくる」と発言しました。

 政府と民自公3党が公的医療・介護保険の縮小方向を打ち出していることと表裏一体に、民間保険市場を広げ保険商品を売っていく狙いを示したものです。


解説

高齢者らを「収益」対象に

 民主党の税制調査会は21日、来年度税制の基本方針をとりまとめました。所得税・資産課税の見直しや消費税の逆進性対策にとりくむとしています。消費税増税を実行するための条件整備です。

解決できない根本矛盾

 民自公が強行した社会保障改悪推進法は、医療・介護の給付範囲の「適正化」=縮小を図ると明記しました。一方、7月31日に閣議決定された「日本再生戦略」は、「公的保険外の医療・介護周辺サービスを拡大する」ことを重点施策に掲げています。

 公的保険の縮小と軌を一にして、私的保険の拡大が議論されていることは偶然ではありません。

 もともと金融審議会の動きは、自見庄三郎金融担当相(当時)が「金融機関の国際競争力の強化」のための「中長期的な課題」の検討を諮問(2011年3月)したことに端を発しています。

 これを受け、金融審議会の「我が国金融業の中長期的なあり方に関する作業グループ」が「金融業は、顧客のニーズを的確に捉え、新たな顧客と新たな市場を創造していかねばならない」(12年5月28日)との報告書をまとめました。

お金あるなしで

 報告書は「少子高齢化の進展に伴い高齢者が主要な顧客層に成長していく」と強調。公的保障だけでは暮らせない高齢者らを「収益の強固な裏付け」とする戦略を示しました。民間保険による現物給付の検討は、この流れを受けたものです。

 しかし、誰もが民間保険の商品を買えるわけではありません。公的保険が切り縮められ民間保険にゆだねられていけば、お金のあるなしによって、受けられる医療・介護・保育が差別されかねません。だれもが平等に必要な医療などを受けられるという国民皆保険制度の解体に通じる方向です。

 医療関係団体からは「(国民)皆保険からの離脱や形骸化が激しくなる」(神奈川県保険医協会)と批判の声が上がっています。

サービスの下落

 現在は営利企業による医療機関の運営は認められておらず、これを機に「営利企業の参入を狙っている」(日本共産党の田村智子議員、10日の参院社会保障・税特別委員会)ものでもあります。

 民間保険が提供するという現物給付の内容も問題です。公益社団法人・全国消費生活相談員協会(丹野美絵子理事長)は、「サービス価値の下落」「事業者の倒産」「給付の質を維持するための監督のあり方」などの懸念を列挙しています。

 (杉本恒如)


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