2012年8月24日(金)
きょうの潮流
日本軍「慰安婦」の事実を否定しようとした橋下徹大阪市長の暴言は、自らを悪質な詭弁(きべん)を弄(ろう)する人物だとさらけ出したようなものです▼「慰安婦が軍に暴行、脅迫を受けて連れて来られたという証拠はない。あるなら韓国に出してもらいたい」。官憲による奴隷狩りのように連行されたケースだけが問題であるかのようにいうのは恐るべき人権感覚です▼実態は、多くの犠牲者が証言しているように、「仕事に就ける」「お金が稼げる」とだまして連れ出され、慰安所に閉じ込めて逃げられないようにされて、日本軍兵士の相手をさせられたのです。まさに性奴隷です▼もちろん腕ずくで連れ去られたと証言する女性もいます。例えば、自宅近くで友だちとゴム跳び遊びをしていた14歳の少女は、突然現れた「巡査と軍人」が乗った車にさらわれました。「私は足をドンドン踏み鳴らし、降ろしてほしいと哀願した。でも、彼らはそんなことには耳も貸さず、泣いたら降ろしてやらないといい、矢のように走りつづけた」(キム・ユンシム著『海南(ヘナム)の空へ』現代書館発売)▼以前、暴力や脅迫による連行を「狭義の強制」として、それはなかったと強弁した安倍晋三首相は国際社会から総スカンでした▼米国下院本会議は異例にも「慰安婦」決議を採択し、日本政府と首相に責任を認め公式な謝罪をと求めました。「狭義」うんぬんには一顧だにしませんでした。それが常識です。それさえわきまえない橋下・「維新の会」に国政を語る資格はありません。