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2012年8月21日(火)

米兵の日本女性への暴行事件

政府 異例の情報提供

背景に オスプレイ配備?

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 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの日本配備をめぐっての政府のゆがんだ「対米配慮」―。米海軍厚木基地(神奈川県綾瀬市、大和市)の米兵による日本人女性暴行事件への対応で異例な動きが浮かび上がっています。(山本眞直)


写真

(写真)女性暴行事件の米兵が所属する米海軍厚木基地=15日、神奈川県綾瀬市

 暴行事件は7月21日の深夜、神奈川県綾瀬市内でおきました。

 暴行現場から逃れた女性は22日午前3時30分ごろ、深夜営業の雑貨・食品店に飛び込み「タクシーを呼んでほしい」と訴えました。

 同店の関係者が本紙の取材に、そのときのやりとりをこう再現しました。「様子がおかしいので私は『警察を呼んだら』と勧めたが『タクシーを呼んで』と繰り返しました。地元のタクシー会社に電話して10分ほどしてきた車で帰りました。翌日、警察がその女性のことを聞きに来たので、やっぱり事件性があったと思ったよ」

文書で通知

 防衛省南関東防衛局は10日、厚木基地を抱える大和、綾瀬の両市に事件の概要を文書で伝えました。

 それによると事件の発生場所は米兵(23歳、2等兵曹)の基地外の自宅(借家)。日本人女性が「米側当事者(米兵)」から暴行を受けたとして神奈川県警大和警察署に被害届が提出され、警察が捜査中とあります。

 防衛局の米兵事件での「情報提供」を異例と指摘するのは沖縄県宜野湾市元基地政策部長の山内繁雄さん。「米兵犯罪の多い沖縄でも、重大な事件でさえ、マスコミ報道を受けて、こんな事件があったと口頭で通知してくるのがやっとです」

“駄目押し”

 しかも「情報提供」には、南関東防衛局からは口頭でこんな“駄目押し”がありました。「警察で捜査中であることをカットせずに伝えてほしい」

 これも異例なこと。綾瀬市の基地対策担当者が「『週刊文春』のことで誤解のないように、という意味ではないか」と解説します。

 『週刊文春』のこと―。同最新号(8月16日・23日合併)にありました。特集「米兵レイプ犯を逮捕させない日本政府」です。

 同記事によると厚木基地所属の2等兵曹の女性暴行事件で、神奈川県警大和警察署が米兵の逮捕状を請求しようとしたところ「司法当局から待ったがかかった」。神奈川県警捜査関係者の話としてその理由をこう記述しています。「オスプレイ配備の問題もあるため、米軍関連で波風が立つのは好ましくない」としてストップがかかったというのです。「被害者よりもオスプレイ優先」に動いたのです。

 警察が被疑者自宅などを家宅捜索した22日はオスプレイが一時配備される米海兵隊岩国基地(山口県)の地元で大規模な反対集会が開かれ、23日には同基地へのオスプレイの陸揚げが控えていました。

日米の密約

 暴行事件から約1カ月の8月18日の午前3時。事件のきっかけとなった綾瀬市内のショットバー。店内はアルコールを手に、大声を張り上げる米兵であふれていました。厚木基地は横須賀基地を母港にする米原子力空母ジョージ・ワシントンの艦載機が常駐。同空母は週明け、作戦行動で出港するからです。

 以前、店内で暴行被疑者の米兵と知り合ったという女性が、携帯に保存している同被疑者の画像を示して言いました。「彼はキレると何をするかわからない」。イラク戦争に従軍したときの負傷でPTSD(心的外傷後ストレス障害)をもち、酒乱気味と言われています。

 日本政府は1953年に「重要と思われる事件以外は日本側は第1次裁判権を放棄する」と米国と「密約」を結んでいます。


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