2012年8月18日(土)
首都圏青年ユニオンの「すき家」判決
非正規でも会社と対等交渉
個人加盟の労組敵視を断罪
|
非正規雇用の労働者でも、労働組合に入って会社と対等に交渉できる―。牛丼チェーン「すき家」を経営するゼンショーによる首都圏青年ユニオンとの団体交渉拒否を断罪した東京高裁(小池裕裁判長)の判決(7月31日)のなかに、この当たり前の権利を前進させる重要な指摘が書き込まれました。
労組未加入多数
いま日本で労働者の3人に1人、若者や女性の2人に1人が非正規雇用となり、正社員でも圧倒的多数が労働組合未加入となっている状況で、地域ユニオンなどの1人からでも入れる個人加盟の労働組合が、労働者の権利を守る大きな役割を果たしています。
ところが、経営者が個人加盟労組を敵視し、労使交渉を拒否して職場を混乱に陥れる事例が相次いでいます。
すき家の事例もそのひとつ。青年ユニオンにアルバイトの若者たちが加入し、未払い残業代の支払いやシフト差別是正などを求めて団体交渉を申し入れたところ、会社は拒否しました。
会社側が団交拒否の理由としたのは、▽青年ユニオンには、すき家店員以外の組合員がたくさんいるから、団体交渉の資格がない▽非正規雇用中心の労働組合は正社員を差別しており非民主的だから、憲法や労働組合法で認められた労働組合の資格がない▽アルバイトは「業務委託」なので「労働者」とはいえず残業代は発生しない―などという荒唐無稽なものです。
そして、会社側は、すき家店員以外も含めた全組合員の名簿を提出しろなどと、青年ユニオンに不当な要求を行いました。
この会社側の主張は、東京都労働委員会、中央労働委員会、東京地裁でことごとく否定されました。それにもかかわらず会社側が控訴して同じ主張を繰り返すことに対し、東京高裁は厳しい指摘を行いました。判決を読むと―。
▽青年ユニオンに対し、労組法上の資格の説明を繰り返し求め、組合員名簿の提出など「過度の要求」をする会社の姿勢は、「団体交渉の回避・拒否など別の目的があったのではないかとの疑問を生じさせる」。
▽非正規雇用中心の労働組合を非民主的とする見方については、「独自の見解が多数みられ、こうした主張で、団体交渉拒否を正当化することは到底できない」。
明確な会社批判
すき家裁判で組合側代理人をつとめる笹山尚人弁護士は「すき家と同様の事例でも、労働者側がほとんど勝利していますが、ここまで判決が会社側を明確に批判したのを見るのは初めてです」と指摘します。
全労連の地方組織は地域ユニオンをつくり、1万人以上が加入しています。産業別組織でも医療・介護・福祉ユニオン(日本医労連)、映演労連フリーユニオンなど、個人加盟労組をつくっています。JMIU(全日本金属情報機器労働組合)などはもともと個人加盟です。首都圏青年ユニオンも、自治労連の東京公務公共一般の青年支部として結成、活動しています。
今回の東京高裁判決は、労組未加入の8割以上の労働者が今後、労組に加入し、職場を改善していく上で、憲法28条に認められた団結権や団体交渉権を確認した重要なものとなっています。(田代正則)