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2012年8月13日(月)

雇用、中小企業、日本経済をどうするか

BS番組 志位委員長が語る

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 日本共産党の志位和夫委員長は11日放送のBS11番組「リベラルタイム」に出演し、「雇用の減少」をテーマに、渡辺美喜男・「リベラルタイム」編集長のインタビューに答えました。その要旨を紹介します。


内需主導の経済へ転換を 消費税増税は破滅の道

 渡辺 共産党は「非正規雇用をなくして正社員が当たり前の社会をつくる」「最低賃金を引き上げる」「長時間・過密労働をなくして雇用を増やす」「大企業と中小企業の公正な取引ルールをつくる」と主張されていますよね。

 でも、このデフレ不況、円高のなか、なかなか大手企業も固定費を減らすために、中小零細企業に納入金額を抑えたり、長時間労働をせざるをえなくなったりして、あまりいい状態にないと思うんですよ。こういう状態をどうお考えですか。

 志位 この10年来、財界、政府がすすめてきた「成長戦略」なるものは、大企業がもうければ、いずれ家計にも“おこぼれ”がまわってくるという理屈で、労働法制を規制緩和して正社員を派遣・契約・パートに置き換えていく、コストカットで中小企業を痛めつけることをやってきたわけですが、その結果、どうなったかが重要なことだと思うんですね。

 数字を申しますと、1997年をピークにして働く人の賃金――雇用者報酬は総額で280兆円から250兆円以下に30兆円以上も減っています(2010年度、以下同じ)。そうなると、需要が冷え込んで経済もダメになる。同じ時期に日本のGDP(国内総生産)は520兆円から480兆円へと40兆円減っている。何が増えたかというと、大企業の内部留保が140兆円から260兆円に120兆円増えている。

 結局、働く人から絞り上げ、中小企業から絞り上げて、お金が大企業に260兆円もたまっている。たまっているところにはたまっているんですけれど、社会全体は不況がひどくなって、日本経済はまったく伸びないことになっちゃったんですね。

 ここを切り替えて、働く人の所得を増やしていく。非正規から正規に替えていく。長時間・過密労働をなくしていく。中小企業と大企業との公平な取引ルールをつくって、下請けいじめをやめさせていく。大企業にためこまれた260兆円のお金を社会に還流させて、内需主導の健全な経済に切り替えていくべきです。

 渡辺 いま消費税増税が行われようとしている。そうすると景気はさらに悪化して、企業は海外に活動を求めることになりますから、国内の雇用者の数も減っていくんじゃないかと。国内景気をさらに悪化させる可能性があるんじゃないかと僕なんか思うんですけど。志位さんは消費税増税に大反対ですよね。

 志位 おっしゃることは本当にその通りです。消費税増税というと1997年のことを思い出しますが、あのとき3%から5%になったでしょ。当時は多少景気はよくなっていたんですよ。ところがそれを上回る負担増で、どーんと経済の底が抜けたんですね。いま、働く人の賃金が減っている。そこに大増税をかぶせたら日本の経済は破滅になります。

 とくに、中小企業は深刻です。私は、国会でもとりあげたんですけれども、日本商工会議所など4団体が調査をやっているんです。「消費税を増税された場合、販売価格に転嫁できますか」という問いにたいして、5割から7割は「転嫁できません」と答えている。転嫁できない場合どうするかといったら、身銭を切るわけです。なけなしの貯金をおろしたり、保険を解約したり、不動産を切り売りしたり、最後は人件費に手をつけざるをえなくなって雇用が失われる。倒産・廃業となったらここで雇用がどんと減るわけです。絶対にこれは反対です。

「財界・アメリカ言いなり政治」ただす政党

 渡辺 ちょっと本筋から離れるんですけれども、既成政党が有権者から飽きられている。自民党、民主党に投票したいという人の数字が下がる。内閣支持率もどんどん下がってきて、野田内閣発足以来、最低の内閣支持率になっている。既成政党にあまり期待しない人たちが多くなってきて、浮動票の支持者が増えている。そういう流れのなかで共産党はどう存在意義を示していきますか。

 志位 既成政党というより「二大政党」だと思いますね(渡辺「ああそうか」、笑い)。「自民か、民主か」のどっちかを選べという「二大政党」論、「共産党はカヤの外だ」とずっとやられてきたんですけれども、(自民、民主両党)どっちもだめだといまなっているわけです。自民、民主がやってきた政治の中身が問われている。

 なぜ、これだけの国民が反対しているのに、消費税の増税をやるのか。あれだけの人々が官邸前で10万人、20万人と声をあげているのに、原発の再稼働に突っ走るのか。財界が圧力をかけている。「財界中心の政治」がある。なぜ、TPP(環太平洋連携協定)に暴走するのか。オスプレイの配備を強行するのか。これは「アメリカ言いなり」ですよね。

 この「財界中心」と「アメリカ言いなり」という政治が、いまの政治の行き詰まりを生んでいるわけで、これを大本から変えようというのが日本共産党です。ですから、私たちの頑張りどこだと思っています。

 渡辺 共産党のあり方はそこにあって、既成の政党とか組織とは違う視点で国民の豊かな生活を目指すという部分で頑張ってほしいと思うんですけど。

四つの“あわせ技”で働く人の所得を増やす

 渡辺 大手企業はどんどん円高で海外進出をはかって、技術のない零細企業は海外に出て行けないじゃないですか。結局、零細企業は非正規雇用に頼らざるをえない。そういう状況になる現実もありますし、内需を拡大すれば零細企業の生きる道もあるんでしょうけれど、志位さんがよくおっしゃる国民の所得を増やす方策はどうやればいいんですか。

 志位 私は、働く人の状態、生活をよくするうえで四つくらいの“あわせ技”が必要だと思っています。

 一つは、非正規雇用を正社員化する。そのために労働者派遣法を抜本改正する。均等待遇のルールをつくる。

 二つ目は、長時間・過密労働をなくす。日本(の労働時間)は、だいたい(年間)2000時間といわれていますが、ドイツより年間500時間も長いわけですよ。長時間・過密労働、「サービス残業」をなくして、雇用を増やしていく。

 三つ目は、最低賃金の問題です。日本の最低賃金は、平均(時給)737円ですが、ヨーロッパは時給でだいたい1000円以上です。737円ですと、フルタイムで働いても年収150万円以下です。「働く貧困層」から脱出できない。これは時給1000円に引き上げる。

 四つ目に、日本航空や社会保険庁で不当解雇がおこなわれ、今度は電機産業で大リストラをやろうとしている。不当解雇、大リストラという「首切り自由の社会」をあらためていく。ヨーロッパでは当たり前の解雇規制法をつくっていく。

 こういう、非正規から正規へ、労働時間の短縮、最賃の抜本的引き上げ、解雇の規制という“あわせ技”をやって、働く人に「人間らしい労働」を保障する。そのことによって全体として賃金の底上げをはかる。そして、人間らしい労働の条件もつくりだしていく。働く人が意欲をもって働けるような社会になってこそ、企業も立ち行くと思うんですよ。

人間を大切にしてこそ企業も先が開けてくる

 志位 いま企業も、たとえば電機産業などは、液晶テレビとか液晶パネルなど、日本で開発したのに、日本ではつくれなくなって、まったく競争力を失ってしまっているでしょ。大手の電機企業などでも、アメリカ人のCEO(最高経営責任者)になって、コストカットだけに熱中した結果、技術者がどんどん流出してしまって、競争力を失っている。やっぱり人間を大事にする企業でないと、企業も立ち行かないと思うんですね。

 渡辺 志位さん、契約社員を正社員にした企業があり、業績が伸びているんだとうかがいましたけれど、その話をちょっとしてください。

 志位 段ボールの国内最大手のレンゴーという企業がありますでしょ。(2008年の)「リーマン・ショック」のときに「派遣切り」が大問題になった。その最中で1000人の派遣社員を正社員にしたというんですよ。

 渡辺 うーん、つらいときにね。

 志位 当然お金がいりますよね。年間5億円かかったそうです。しかし、社員のモチベーション(やる気)がうんと高まって業績がよくなったという話を聞きました。

 実は私、(テレビ東京系の)「カンブリア宮殿」という番組に、「派遣切り」の最中に出演して、「派遣切りは許せない」「大企業は内部留保を取り崩して雇用を守るべきだ」という話をしたんですね。その後、(日産自動車会長の)カルロス・ゴーンさんが(同じ番組に)出演して、「派遣切りはやむをえない」という話をした。その後にレンゴー社長の大坪(清)さんが出演して、1000人を正社員にしたという話をして、やっぱりまっとうな企業のあり方はこっちだということになった。

 人間を大事にする企業でこそ社員のやる気も出る。技術力だって高まりますし、先が開けてくると思う。電機産業が衰退しているという話をしましたが、人間をモノ扱いにし、「使い捨て」にする企業は立ち行かなくなると思うんですよ。

中小企業こそ日本経済を支えている根幹――本腰を入れた振興を

 渡辺 僕なんか自分で会社を経営していてつくづく思いますのは、収益が上がらないと人を雇えない。賃金も上げていけない。そのためにはやっぱり収益をある程度あげなければいけない。中小零細企業はみんなそうだと思うんですね。ほんとは正規社員にしたいけど、収益が上がらないのでやむなくそういう形をとっているケースもあるんだろうと思うんです。そのへんはどうお考えですか。

 志位 大企業と中小企業との間の取引があまりに不公正なものとなっている。大企業が優越的な地位を乱用して中小企業をいじめている実態があるんですね。

 たとえば、東京・大田区蒲田の中小企業――町工場の話をうかがいますと、単価から原材料費を引いた加工賃がどんどん切り下げられて、半分以下にまで切り下げられてきたなどという実態があります。一方的な下請け単価の買いたたき、一方的な発注の打ち切り――「下請け切り」が横行しているんですよ。ところが、公正取引委員会などが、主導的にこれを検査してただすという体制になっていなくて、無法が横行している。

 大企業と中小企業との関係が、文字どおりの対等な取引ができるように、独占禁止法の改正も必要ですし、検査体制の抜本的強化も必要です。中小企業を守るルールをつくっていく必要がある。ヨーロッパでは、日本のような重層的下請け構造はなくて、基本的には中小企業と大企業のあいだで取引が公正にやられています。

 日本は、中小企業の場合、とくに小企業になりますと、大企業の社員とくらべて賃金はちょうど半分ですよ。ところが、ヨーロッパをみますと、大企業でも小企業でも賃金はほとんど変わらない。そういう社会にしていかないといけないと思いますね。

 渡辺 僕も、うちの社員にそういうふうに給料を払いたいんですよ。収益性からすると、そのへんの問題があるじゃないですか。利益を一定レベル上げない限りは、働く人たちにも高い賃金を払えない。そのためにほかにはない技術をもつことが重要なんだと。そういう技術力さえあれば大企業にたたかれないんだといいますけれど、そのへんは。

 志位 大企業との関係で公正な取引のルールをつくることと同時に、国がどういう施策をやるかが大事です。いま中小企業予算というのは1千数百億で、(米軍への)「思いやり予算」より少ないんです。これは1兆円ぐらいのお金をつけて、中小企業の振興を国が本腰を入れて乗り出す。たとえば技術開発、販路の開発、後継者の育成、金融などです。こういう点で国がバックアップする。中小企業こそ日本経済を支えている根幹ですし、雇用の7割は中小企業が支えているわけですから、そこを応援する政治でないといけない。

労働時間の短縮、最低賃金の引き上げなどで、雇用を増やす

 渡辺 私どもの会社でも今年新卒を入れたんですけれど、新入社員に聞いてみると、7割ぐらいしか就職できていないと。そういう状況はよくないですよ。大学出ても働くところがない。

 志位 さきほど四つの“あわせ技”といったんですが、たとえば労働時間の短縮という問題があるでしょ。「サービス残業」――ただ働きをなくすこと、有給休暇を100%取得すること、週休2日制を100%実施すること、これらをやると466万人雇用が増えるという試算もあるんですよ。労働時間を短縮して雇用を増やすという当たり前のことをやっていく必要があると思います。

 渡辺 そうするとアメリカ、ヨーロッパ並みの高い失業率にはならないですみますか。

 志位 ええ。日本政府の失業率の統計のやりかたは問題点がありますが、それでも5%とずいぶん高くなってしまっています。若い人は10%まできてしまっている。その解決のうえでも、四つの“あわせ技”、とくに労働時間の短縮が必要になっていると思います。

 それから、最低賃金を引き上げますと、内需がよくなります。そうしますと、新たな雇用が生まれることになります。中小企業には賃金助成をつけて、最低賃金を全国一律1000円にしますと、だいたい労働者のなかで2200万人(時給1000円未満の雇用者)ぐらいの賃金がぐっと上がるわけです。すると内需がよくなるでしょ。そうすると雇用がここでも増えるんですよ。四つの“あわせ技”が、それぞれ雇用を増やす効果があると思います。

社会保障の充実――生活・将来不安なくし、内需をよくする

 渡辺 それと志位さんは、あわせて日本経済回復のためには社会保障再生計画が内需拡大に結びつくんだとおっしゃっていますが。

 志位 この間、小泉「構造改革」以来、社会保障をどんどん削ってきて、もうずたずたになってしまった。これを「再生」し、さらにヨーロッパ並みの社会保障にしていく。たとえば、最低保障年金を創設し、医療費の窓口負担を軽減し、無料にしていく。こういうことをやろうと。

 そのための財源としては、まず富裕層と大企業に応分の負担を求めます。それでも足りない分は、つぎの段階のことですけれども、所得税の累進を強くして、そこで賄おうという「提言」を私たちは出しています。

 社会保障をよくすることは、二重に経済効果があります。まず、生活不安、将来不安がなくなりますからお金を使うようになります。それから福祉というのは、介護にしても医療にしてもマンパワーが必要ですから、ここで雇用が生まれます。社会保障をよくすることは、経済の内需をよくしていくことにうんとつながると思います。

 渡辺 さきほど社会保障の充実への抜本改革のために税制改革をするとおっしゃった。どこを重点に共産党はしたらいいとお考えなんですか。

 志位 まずムダ遣いの一掃をおこないます。それとあわせて、増税をするのだったらまず富裕層と大企業に応分の負担を求めようじゃないかと。

 たとえば、富裕層をみると、所得1億円をこえますと、所得税の負担率が下がってくるんですよ。証券優遇税制など大金持ち減税のいろいろな仕掛けがあって、大金持ちになると下がってくるんですよ。これは下がらないようにきちんと富裕層には払ってもらう。

 それから、法人税の実質負担率は、大企業と中小企業を比べると、大企業の方が低いんですよ。いま法人税というのは国税で30%が基本税率でしょ。中小企業は(実質で)26%ぐらい払っていますが、大企業は(実質で)19%ですよ。どうして低いかというと、研究開発減税とかいろいろな減税の仕掛けがあって、大企業の優遇税制になっている。これをただして、まずは富裕層と大企業に応分の負担を求めようじゃないかと主張しています。

“共産党の意見取り入れて考えていけばいい”(渡辺氏)

 番組の最後に渡辺氏は、次のようにコメントしました。

 渡辺 日本経済の回復のための方策について、いろいろみなさんお考えになられている。共産党のおっしゃるような意見を取り入れて考えていけばいいと思うし、やっぱり国民の所得を増やしていく。そうすることによって、国内経済を活性化するんだ、大企業にとっても恩恵がありますよという方向で、いろんな経済政策がとられるべきではないかと僕は思います。


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