2012年8月13日(月)
米企業の事故 2万人超死亡
インド毒ガス救済命令
最高裁 被害者は大歓迎
【ニューデリー=安川崇】インド中部ボパールで1984年に起きた米化学メーカーによる毒ガス漏えい事故について、インド最高裁はこのほど、後遺症に苦しむ患者のデータをコンピューター管理し医療支援を受けやすくすることや、現地の汚染物質の除去などを現地州政府や中央政府に命じました。被害者団体は「画期的」と歓迎しています。
報道によると9日付の命令は、当局に対しすべての患者に「健康手帳」を発給することや、政府系病院で適切な治療を受けられているかを監視することなどを求めています。
また「大量の有毒物質が現場の工場周辺に蓄積していることは疑いない」と認定。被害拡大を防ぐため、中央政府と州政府に汚染物質の除去に向け「6カ月以内に適切な措置をとる」よう命じました。
患者支援団体「ボパール情報と行動グループ」など5団体は連名の声明で「今も後遺症とたたかう生存者に大きな希望を与えた」と歓迎しました。
一方英字紙ヒンズーは11日の社説で、政府はこれまで外資企業に配慮し、被害者の救済に積極的でなかったと指摘。「最高裁の命令を機に、人々の利益を経済発展と同等の地位に引き上げるべきだ」と述べました。
84年の事故では米ユニオンカーバイド現地子会社の殺虫剤工場から猛毒のガスが漏出。約1万5千〜2万5千人が死亡し、10万人以上が後遺症を負ったとされます。患者側は事故後にユニオン社を買収した米ダウ・ケミカルに土壌改善などを求めていますが、同社は「補償問題は解決済みで自社に責任はない」との姿勢を崩していません。