2012年8月13日(月)
オスプレイ低空飛行 これが直下自治体
日本の空は誰のもの
米軍が勝手に設定・自由に使用
「空の暴走族」と呼ばれ、全国で爆音をまき散らす米軍機の低空飛行訓練が顕著になったのは、1980年代以降です。
低空飛行訓練ルートの存在は、91年の十津川(奈良県)ケーブル切断、94年の早(さ)明(め)浦(うら)ダム(高知県)墜落、99年の高知県沖墜落などでの米軍機事故報告書に記載されていました。しかし、米軍が具体的な緯度・経度を含めてルートを明示したのは、オスプレイ配備に伴う「環境レビュー」が初めてです。
本紙は、米軍が示したルート(航法経路)を、地球儀ソフト「グーグルアース」や目撃証言に基づいて分析し、ルート直下の自治体や推定されるポイント(進路切り替え地点)を割り出しました。
1面所報のように、ルート直下や周辺には多くの民家や公共施設が含まれています。99年の低空飛行訓練に関する日米合意は「人口密集地域や公共の安全に係る他の建築物(学校、病院等)に妥当な考慮を払う」としていますが、そのような「考慮」が払われているとは言いがたい、米軍最優先です。
しかも、これらのルートは、オスプレイが低空飛行訓練を行うルートや空域の一部にすぎません。
第一に、米軍は中国山地を貫くブラウンルートでの訓練を明言しているにもかかわらず、「環境レビュー」には記載がありません。重大な欠落です。
第二に、低空飛行訓練は、「ルート型」だけではありません。群馬県上空や広島、島根県などで、自衛隊の訓練空域を独占的に使用しての訓練が、高い頻度で行われています。
さらに、米空軍三沢基地(青森県)所属のF16戦闘機が秋田県の男(お)鹿(が)半島周辺や三陸地方などで頻繁に低空飛行訓練を行っています。これらは、環境レビューで示された東北の2ルートとは明らかに異なる空域です。
加えて各地の目撃証言によれば、米軍はしばしば自ら設定したルートすら外れて飛行しています。
日本政府は自衛隊空域を除き、訓練の詳細はおろか、ルートさえ把握していません。米軍は日本政府に通知することなく、ルートを自由に設定し、自由に使用しているのです。いったい、この国の空は、だれのものなのでしょうか。
米では住民の反対で頓挫
オスプレイの低空飛行訓練は、米国でも問題になっています。
キャノン空軍基地を拠点に、米中部のニューメキシコ州とコロラド州にかかる約6万平方マイルの山岳地帯で、特殊作戦機のMC130や空軍使用のCV22オスプレイが低空飛行訓練を実施する計画が示されました。最低高度は約60メートルで、夜間の訓練も計画されていました。
しかし、2010年9月に発表された同計画の環境影響評価案(EIS)に対して、1600人以上の地域住民や環境保護団体などから懸念や反対の声が寄せられました。これを受け、米空軍は事実上、無期限の延期措置をとりました。
環境保護団体が提案した意見書の草案はオスプレイについて、騒音が野生動物などに与える影響に加え、「多くの死傷者を出した墜落の記録」があり、「事故原因も特定されていない」としています。日本の住民・自治体が抱いている懸念と共通しています。
米軍はEISで「環境レビュー」以上に詳細なルート図を提示して住民の意見を聴取。それに従いました。
日本が民主主義国家だというのなら、少なくとも、オスプレイの訓練区域と関連する自治体、住民への影響を提示し、自治体や住民の意見を聴取し、その意見に従うといったことをやるべきです。
ピンクルート・グリーンルート
自治体 ●グリーン 【青森】十和田市、田子町【岩手】八幡平市、滝沢村、雫石町、西和賀町、北上市、奥州市【秋田】小坂町、鹿角市、横手市、東成瀬村、湯沢市【宮城】大崎市、加美町、仙台市、川崎町、蔵王町、七ケ宿町、白石市、丸森町【山形】最上町、尾花沢市、東根市、天童市、山形市、上山市【福島】国見町、伊達市、相馬市、飯舘村、川俣町、二本松市、浪江町、葛尾村、田村市、川内村、小野町、平田村、いわき市、古殿町、鮫川村、塙町 飛行ポイント ●グリーン |
ブルールート
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自治体 飛行ポイント |
オレンジルート
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自治体 飛行ポイント |
イエロールート
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自治体 飛行ポイント |
パープルルート
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自治体 飛行ポイント |
※飛行ポイントの各地点は本紙による推定