2012年8月13日(月)
きょうの潮流
江戸から現代までのいろはカルタを展示した「夏休み いろはカルタまつり―時田昌瑞ことわざコレクションから―」(明治大学博物館)で、胸をつかれるカルタを見つけました▼〈イツモナカヨシトナリグミ〉〈ヘイタイサンヨアリガタウ〉〈オトコノコドモハイクサノケイコ〉〈ココロハヒトツジユウゴノマモリ〉〈ヒゴロノクンレンコノトキゾ〉▼1941年、対米開戦の前夜に発売されたいろはカルタです。38年に発令された国家総動員法の下で、女性も子どもも戦争に駆り立てられていく様子がありありと伝わってきます▼〈いつも仲良し〉とうたわれた〈隣組〉は40年に制度化され、防空・防火・防(ぼう)諜(ちょう)、食糧や生活物資の配給、住民動員や物資供出の連帯責任を担いました。〈銃後の守り〉をするため、バケツリレーの防火訓練や竹棒の先をとがらせて武器にした竹やり訓練が課せられ、〈男の子ども〉は、お国のため兵隊になって死ねと強制する軍国主義教育にのみこまれていきます▼〈犬も歩けば棒に当たる〉で始まり〈京の夢大阪の夢〉で終わる48枚のいろはカルタは、江戸中期にできたといわれます。〈猿も木から落ちる〉〈鬼に金棒〉などのことわざが親しみやすく、先人から受け継がれてきた人生の知恵を遊びながら身につけることのできるいろはカルタは、世界に誇る日本の文化です▼文化は、自由で平和な社会と、人々の幸せな生活に資するものでありたい。戦争に加担するものであってはならないと改めて思います。