2012年8月6日(月)
社会リポート
住吉市民病院
病院守れ 町あげて
大阪・橋下市長の統廃合方針に反撃
「地域の出産施設が消える」
昨秋の大阪市長・府知事選挙で「保健、医療を充実させる」と公約していた橋下徹市長がまたも、医療を切り捨てる統廃合を打ち出しました。「住吉市民病院をなくさないで」と医師や町内会長、命と健康を守る地域団体などがこぞって運動に立ち上がっています。(北野ひろみ)
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「住吉市民病院は急性期医療センターの方に移していく」。強権政治の司令塔、府市統合本部で橋下市長は5月末、住之江区の住吉市民病院を府立急性期・総合医療センターへ統廃合することを打ち出しました。橋下市長は「急性期に集約できれば、機能的にはアップする」と述べ、府市統合本部も、府立・市立病院の経営統合で「より自立的かつ効率的・効果的な経営」を目指すとしています。橋下市長の半年前の、市民への公約などどこ吹く風です。
市は、1993年、当時九つあった市立病院のうち5病院を統合。一昨年には、北市民病院を民間に売り飛ばすなど、公立病院を切り捨ててきました。
再建策ほごに
市南部地域には、小児医療や出産前後の医療(周産期医療)を担う病院が不足しており、西成区、住之江区には出産できる病院は住吉市民病院しかありません。1950年から地域医療を担ってきた同病院は老朽化が進み、前市長時代に「小児・周産期医療に特化した」病院として再建されることが決定していました。
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しかし橋下市長は4月、病院建て替えにかかる調査費2000万円を凍結しました。
7月市議会で日本共産党の井上浩市議がこの問題を追及。同病院は年5万人の入院と10万人の外来患者が利用し、出産件数は726件、同病院がなくなれば地域から出産施設が消えると指摘しました。
橋下氏は「24区それぞれの区にフルセットでそろえることはこれからの時代ありえない。歩いて行けるだけが病院じゃない」と暴言を吐き、あくまでも統廃合を押し通す構えをみせました。
これに対し、地域の労働組合や市民団体でつくる「住吉市民病院を充実させる会(市民病院をよくする会)」は請願署名に取り組むとともに、区内すべての団体や個人に共同を呼びかけてきました。
駅前での署名の呼びかけに、病院の統廃合を聞いた市民が次々、ペンをとりました。
つえを片手に応じた女性(76)=住之江区=は「市の南部には住吉市民病院以外に、もう公立の大きい病院はない。それを統廃合なんて絶対だめ」と憤ります。
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同病院で生まれたという女性(19)=同=は「橋下市長は削るところが間違っている。学校制度や教育などの問題でも賛成できない」と話しました。
署名4万人分
町会も立ち上がりました。区内の連合町会長は「公立の病院があってまちが成り立ってきた歴史がある」と署名を広げています。「人命にかかわることを無駄と言っちゃいかん。赤字になったからやめますというやり方は、営利を目的とした企業の考え方でしょう。市民を守る行政のやることではありません」
町会や社会福祉協議会など地域で活動する団体が参加する「区政協力会」は「政党や思想の違いを超えて取り組もう」と署名に取り組むことを確認。区の社会福祉協議会、地域振興会(連合町会で構成)が、統合案撤回と現地建て替えを求める橋下市長あての署名を集め、7月25日、下田三七男地域振興会会長らが4万1380人分を市に提出しました。
大阪の6千人以上の開業医が加入する大阪府保険医協会(高本英司理事長)も、統合案を撤回し、現地建て替えを求める要請書を提出しました。橋下市長のやり方が「地域医療の弱体化を招き」「市民の命と健康に対する行政責任を著しく後退させる暴挙」だと厳しく指摘しています。