2012年8月6日(月)
消費税増税 「地域医療は崩壊」
今でも経営ぎりぎり■負担は倍に
野田内閣が消費税増税に向けて暴走するなか、医療の現場から「このままでは医療崩壊に拍車がかかる」という声が噴出しています。(西口友紀恵、斎藤瑞季)
東京・大田病院
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東京都大田区にある大田病院(全日本民医連加盟)はベッド数200床未満の中規模の一般病院です。
大田区は、大企業の下請け、孫請けなどの町工場が多い地域です。しかし、「景気の低迷が続き、とにかくどこも仕事がないんです。倒産・廃業する工場が相次ぎ、街の様相までが大きく変わっています」(清水菊美・日本共産党区議)という状況です。
そうした地域にあって大田病院は、「断らない医療」を掲げて救急医療や在宅診療に力を入れ、低所得者への無料低額診療事業の実施、差額ベッド料をとらないなど、地域医療で大きな役割を担ってきました。
消費税増税法案が国会で通されようとしている状況に、同病院の入部史朗事務長は「増税されたら経営が成り立たなくなり、地域医療の崩壊につながる」と危機感を募らせています。
■仕入れに消費税
公的医療は公共性をもつことから消費税非課税とされ、医療機関は保険診療分について患者から消費税を受け取っていません。しかし、医療材料、医療機器などすべての仕入れには消費税がかかるため、その分の負担をかぶっています(損税)。
大田病院の場合、消費税の負担額は2011年度約7200万円。12年度は7440万円(推定)になる見込みです。診療所や訪問看護ステーションなども含めた法人全体の損税は1億円(11年度)にもなりました。
「国の医療費抑制政策のもとで医療機関はぎりぎりの経営を強いられています。そのもとでの1億円の負担は非常に重い。消費税増税で今のシステムのまま10%になったら、倍の2億円になる」と入部さんは言います。
大田病院では、東京電力による電気料金値上げ額が従前の130%、年間およそ900万円も増えると推計され、厳しい経営に追い打ちをかけます。
■患者さんも苦境
患者には、大企業から厳しい単価の値引きを強いられている町工場の人も多く、今でも、大企業に納入する製品に消費税を転嫁できず「身銭を切っている」という話をよく聞くといいます。
「非常に腹立たしいのは、輸出大企業は下請けをたたいて消費税を払っていない場合でも、『輸出戻し税』で消費税が還付され得をすること。消費税率が倍になれば戻し税も倍になる」と入部さん。
「消費税増税で生活が苦しくなると患者さんはますます医療にかかりにくくなります。消費税増税自体、許せません」と話します。