2012年8月3日(金)
仏オランド政権
転換明確
深刻化する財政赤字の克服を急務と位置付けるフランスのオランド政権は5月の発足以来、保守・親米のサルコジ前大統領がめざした新自由主義・緊縮路線とは異なり、富裕層増税や金融取引税導入とともに、消費税増税の撤回を決めました。外交政策の見直しにも着手し、「サルコジ時代からの決別」を印象付けています。(浅田信幸)
富裕層に増税 消費税増税撤回 外交見直し
国民議会(下院)と上院は、夏季休暇(バカンス)入りを前にした7月31日、それぞれ政府提案の今年度補正予算を賛成多数で可決しました。
これは72億ユーロ(約6912億円)の新たな増収を狙ったもの。資産税や相続・贈与税、配当および高額退職金等への課税を強化するなど、富裕層への増税を思い切って打ち出しました。資産税は、130万ユーロ(約1億2480万円)超の資産に対する課税強化だけで24億ユーロ(約2304億円)の増収を見込んでいます。
さらにサルコジ前政権が決定した付加価値税(消費税)の最高税率19・6%を21・2%に引き上げる措置を撤回し、現状のまま据え置きました。大統領と首相の給与を30%削減し、月1万5000ユーロ弱(約140万円)にしました。
保守野党の国民運動連合はこの補正予算を「粗暴」で「復讐(ふくしゅう)心」からの措置だと非難。これに対して与党・社会党のエケール予算委員会報告者は、財政再建に向けた「礎石を据えたものだ」との談話を発表しました。
またオランド氏は7月中旬、前政権が進めた北大西洋条約機構(NATO)への全面復帰と、今後の欧米関係について、それぞれ全般的な「評価」を進めるようベドリヌ元外相に委任したことを明らかにしました。
オランド氏は大統領就任直後に、米国が主導するテロとのたたかいでアフガニスタンに派遣している自国軍部隊の年内撤退を関係国に認めさせています。外交政策でもサルコジ氏の親米路線を修正しようとの意図があるものとみられます。