2012年8月1日(水)
主張
日ロ領土問題
旧ソ連の領土拡張の是正を
玄葉光一郎外相がロシアを訪問して外相会談を行い、プーチン大統領とも会談しました。野田佳彦首相がプーチン大統領と6月に初会談した際、領土問題での交渉「再開」で合意しました。玄葉外相の訪ロは、この流れを追うことで領土交渉の成果をあげたい野田政権の思惑を示しています。
しかし、領土交渉を前進させるには、日本の歴史的領土について国際的に通用する道理に裏打ちされた主張を展開することが不可欠です。道理をもたないまま、ロシアの動きに一喜一憂する姿勢は問題を袋小路に追いやるものです。
全千島が日本の領土
かつて自民党政権との間で交渉に“意欲”を見せたプーチン大統領の再登場に、野田政権が期待を寄せているのは明らかです。野田首相はプーチン大統領との電話会談で「叡智(えいち)ある解決」を呼びかけたといいます。知恵は必要ですが、“腹芸”では解決をはかるどころか、国民をごまかすことにほかなりません。
国後(くなしり)、択捉(えとろふ)を含む千島列島は、戦争ではなく19世紀の日ロ間での平和的交渉によって確定した日本の歴史的領土であり、ロシアによる領有はまったく不当なものです。その原点から出発することなしに、日本の主張の正当性を示すことはできません。
ソ連は第2次大戦の終戦にあたって、日本の領土である千島列島を併合し、北海道の一部である歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)まで占領しました。これは戦後処理の方針を示した「カイロ宣言」(1943年)の「領土不拡大」原則やその実施を表明したポツダム宣言(45年7月)を踏みにじったものです。
スターリンが領土拡張主義にたって、ヤルタ会談(45年2月)で米英に、対日参戦と引き換えに千島列島の「引き渡し」を密約させたのです。
一方、吉田茂政権はサンフランシスコ平和条約(51年)に盛り込まれた不当な領土条項(第2条c項)を受け入れ、千島列島の放棄を宣言して、ヤルタの密約を追認する誤りを犯しました。
同政権の流れをくむ歴代自民党政権はこの誤りをただそうとはせず、国後、択捉、歯舞、色丹の「北方四島」は千島ではないとして返還を求めるという、国際的に通用しない主張を持ち出して矛盾を広げてきました。
野田政権は自民党政権時代の「四島返還論」を引き継いでいますが、その見直しこそが解決の前提です。サンフランシスコ条約の千島放棄条項を再検討し、全千島の返還と歯舞、色丹は平和条約の締結以前に返還するよう求める立場が必要です。
サンフランシスコ条約の再検討は米国追随ではできません。同条約の千島放棄条項は米英ソのヤルタの密約が前提だからです。
自主独立の立場にたち
野田首相や玄葉外相が、千島「引き渡し」に同意した米国への追随を続ける限り、道理ある主張を貫くことは期待できません。自主独立の立場で主権を確保する姿勢こそ領土問題の基本です。
日ロ外相会談でロシアのラブロフ外相は「第2次大戦の犠牲の結果として」4島がロシア領になったというのがロシアの法と正義の立場だ、と主張しました。その主張を突き崩すには、歴史を踏まえた道理ある主張を堂々とおこなう以外にありません。