2012年7月30日(月)
主張
オスプレイ日米協議
“反発かわし”は通用しない
野田佳彦政権が、米海兵隊の新型輸送機オスプレイの沖縄・普天間基地への配備を受け入れ、経由地となる岩国基地(山口県)への陸揚げを認めたことに、沖縄県や山口県はもちろん全国から反対の声が上がっています。
野田政権は陸揚げ後、日米合同委員会や日米外務・防衛の局長級協議などを相次いで開催し、オスプレイの「安全」対策や運用について協議を始めています。しかしオスプレイの配備計画そのものをやめよとは一言も言わず、国民の反発をかわすためだけに協議するのでは、国民の怒りの火に油を注ぐことにしかなりません。
手順があべこべ
野田政権はオスプレイの配備に対し、これまでは「配備自体は安保条約にもとづくアメリカの権利。どうしろとは言えない」(野田首相)などと、国民の反対の声をまともに伝えることさえしてきませんでした。ところが23日にオスプレイが岩国基地に陸揚げされた後は、野田首相自身がドニロン米大統領補佐官と会談(26日)したのをはじめ、日米合同委や局長級協議の開催など矢継ぎ早です。
今週末には森本敏防衛相自身が訪米し、パネッタ米国防長官とも会談する予定です。森本氏はオスプレイにも試乗し、「安全性」を確認する意向です。
オスプレイの沖縄配備に対しては仲井真弘多県知事をはじめ沖縄のすべての自治体首長と議会が反対しています。経由地とされた岩国基地がある山口県知事や岩国市長も反対しました。それだけでなくオスプレイが日本全国で低空飛行訓練を予定していることから、全国知事会などにも反対の声が広がっています。オスプレイをめぐってアメリカと協議するなら、配備を決め陸揚げする前にやるべきで、陸揚げしてからあわててというのはまったく本末転倒です。
オスプレイは墜落事故を繰り返しており、4月にはアフリカ北部のモロッコで、6月にはアメリカのフロリダで墜落しました。いずれもその原因さえ発表されていないのに配備を強行したのは国民をばかにした話です。防衛省は専門家チームも派遣する計画ですが、配備を決め陸揚げした後のアリバイづくりのような調査を国民が信用するはずはありません。
見過ごせないのは、野田政権が一連の日米協議でも、オスプレイの運用などについて協議するだけで、配備計画そのものは議題にしようともしていないことです。「世界一危険」といわれるオスプレイを、「世界一危険」といわれる沖縄の普天間基地に配備するのに県民が反対するのは当然です。しかも米軍は高度60メートルを含む低空飛行訓練を日本各地で実施するといっています。こうした危険な航空機の配備中止を要求しないで「安全」対策を協議するといってもそれは絵に描いた餅にしかなりません。
配備計画を撤回せよ
野田政権が本当に国民の安全を守るなら、オスプレイの配備計画そのものの撤回を求め、岩国基地に陸揚げした12機は持って帰るようアメリカに求めるべきです。
国民の反対が無視できないので、オスプレイの運用についてだけは協議するが、配備撤回は言い出せないという態度を野田政権が続けるなら、いよいよ安保条約そのものをなくすことが国民の世論になります。