2012年7月29日(日)
集団的自衛権の行使容認へ
自民が野田内閣と共鳴
海外での武力介入に道
自民党が国家安全保障基本法(概要)をまとめ(6日)、その中で集団的自衛権の行使をはじめ、幅広く海外での武力行使を容認する方向を打ち出しています。野田佳彦首相が国家戦略会議フロンティア分科会の提言を受け、集団的自衛権の行使を容認する方向への転換を示唆していることと響き合っています。
自民の法案概要は第10条で「我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態」に自衛権を行使すると明記。日本が攻撃されていない場合でも武力行使を可能とする、いわゆる集団的自衛権の行使を容認するものです。
自民党の閣僚経験者の一人は、「民主党政権のもとで日米の信頼関係がめちゃくちゃになった。今度の法案で、日米安保をもう一度明確に位置付け、その中で双務性を明確にする」と述べます。日本が攻撃を受けたときだけでなく、アメリカが攻撃を受けたときにも共同で軍事行動をとるということです。
いま集団的自衛権行使の論議が強まる背景について、元政府高官の一人は、「太平洋に出てこようとする中国の潜水艦など海洋戦力を、米海軍と日本の海上自衛隊が協力して抑え込むという戦略が動いている。(自民の法案作りは)その動きに対応したもので、民主党政権が進める動的防衛協力や南西諸島への自衛隊配備と同じだ」と指摘します。
自民党内には、憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認することには慎重論もありますが、「石破茂元防衛相はじめ積極派が押し切った」(関係者)といいます。
また、自民党案には「駆けつけ警護」など、海外派兵された自衛隊が現地での武力紛争に介入することを認める内容も含まれています。
法案概要は11条で、国連安保理などが決める「各種の安全保障措置等に参加する場合」を規定。「本条の下位法として国際平和協力法案(いわゆる一般法)を予定」と明記しています。自民党は、この「国際平和協力法案」をすでに国会に提出しており、現在も衆院の議院運営委員会で懸案とされています。
同法案では安全確保活動、警護活動、船舶検査活動などを自衛隊の任務として規定。警護活動などでは「事態に応じ必要と認められる範囲」で武器使用が認められます。自民党議員の一人は「自衛隊が治安の不安定な南スーダンに派遣されており、急ぐ必要がある」と述べます。
市民が大勢集まり暴動になりそうな場合や、殺傷力の高い武器を持つ蓋然(がいぜん)性の高い者による暴行などに対しては、「危害」=殺傷が許されます。抗議する市民に銃を向け、アメリカがイラクやアフガニスタンで繰り広げた“掃討作戦”を可能とする構造です。
民自公3党の事実上の大連立のもと、憲法9条破壊の動きが強まっていることに警戒が必要です。(中祖寅一)