2012年7月28日(土)
被災地人口減少「震災前から」
被災者本位の復興に背
経済財政白書
古川元久経済財政担当相は27日の閣議に日本経済の現状と課題を分析した2012年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出しました。
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東日本大震災からの復興を目指す東北地方では、沿岸部での生産・販売能力の被害が激しく、一定の回復は示しつつも大震災前の水準にまでは達していません。また津波の浸水地域では、2011年末の賃金水準は前年比2割程度の下落となるなど厳しい状況になっています。小売業では、営業停止店舗の影響により、販売が低迷したままです。また、福島県を中心に人口が大量に流出、宮城県では県内就職を希望する大学生が減少しています。このような状況を指摘しつつも白書は、「被災地の人口流出や生産活動の低下は、今回の大震災で加速した面はあるが、震災前から減少傾向にあった」と述べています。被災者に寄り添った復興に背を向ける姿勢です。
白書は日本経済の現状について「緩やかに持ち直してきた」との認識を示しています。その一方で白書は、「厳しい雇用環境等から、中間層から低所得者層への転落も見られる」と指摘。特に、若年母子世帯は、収入が低く食料支出額が世帯平均の半分程度、旅行・宿泊などにはほとんど支出していない実態を示しています。この世帯は、所得水準の低い高齢者世帯とともに「社会的に排除されやすい状況にあると考えられる」と警告を発しています。ところが、解決策として白書が挙げるのは、消費税増税と社会保障の切り捨てを一体的に進める「社会保障と税の一体改革」の推進です。分析と提言が矛盾に満ちています。
所得・法人減税で大穴
15兆円減 大企業優遇が要因
2012年度の『経済財政白書』は、「国の基礎的財政収支が悪化した背景」について「減税政策による税収の減少」を理由の一つに挙げています。白書は2009年度の減収額について「(1980年比で)所得税が約11・7兆円、法人税が約3・5兆円」と、15兆円を超える規模だと試算。大金持ち、大企業向けに減税をしたことで、日本の税収を空洞化させたことを事実上認める内容となっています。白書は国の一般会計歳入の推移を検討。所得税収・法人税収について「バブル崩壊以降、ほぼ一貫して減少傾向にあり、近年ではリーマンショックの影響も受け、2010年度は1990年度からほぼ半減している」と指摘しています。
白書は所得税収が減少した要因の一つに「1994年秋の税制改革による累進構造の緩和などを含む制度減税」を上げています。所得税の「累進構造の緩和」とは最高税率を引き下げるという意味であり、主に高額所得者が恩恵を受けます。
法人税収が減少した要因として白書は景気低迷に加えて「1998年、1999年の2度にわたる法人税率の引き下げ」などを指摘。さらに「(2003年度から実施された)試験研究費の税額控除やIT関連設備に係る税額控除などは1・4兆円程度の減税であった」と述べています。これらは大企業に恩恵が大きい制度です。