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2012年7月25日(水)

ブラジル 所得格差 縮小進む

貧困層支援が効果

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 所得の格差が最も大きい国の一つとされる南米ブラジルで、格差の縮小が進んでいます。背景として、2003年から続く労働党政権が進める貧困層支援による内需拡大や、欧米諸国に頼らない貿易関係づくりが指摘されています。 (サンパウロ=島田峰隆)


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(写真)ルイス・ベルゾ教授(島田峰隆撮影)

 ブラジルの研究機関ジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)はこのほど、03年に0・58を超えていたジニ係数が14年には0・51程度にまで下がる見通しだと発表しました。(グラフ)

 カンピナス大学経済学部のルイス・ベルゾ教授(70)は「経済格差の広がりが世界で問題になる中でブラジルは不平等を減らした数少ない国の一つだ」と指摘します。その理由として(1)貧困層支援を柱とした内需拡大(2)欧米依存の脱却と貿易相手国の多様化、中南米の地域統合―を挙げました。

「飢餓ゼロ」掲げ

 03年から10年まで続いたルラ前政権は「飢餓ゼロ」を掲げ、貧困世帯向けの家族手当を拡充。11年発足のルセフ現政権もその政策を引き継ぎ、現在では03年時の約3・7倍にあたる約1300万世帯が支援を受けます。またルラ政権時代から、最低賃金の引き上げと正規雇用の拡大、融資条件の拡大によって労働者の購買力を強めてきました。

 国際労働機関(ILO)は19日、1カ月35ドル(約2700円)未満で生活する極貧状態のブラジル国民が03年から09年にかけて約2800万人減ったと発表。家族手当や賃上げなどの社会政策が功を奏したと指摘しました。

 対外的には中南米の地域統合、アジア・アフリカ諸国との貿易関係強化に力を入れ、欧米諸国の経済状況に大きく影響されない仕組みをつくってきました。

 ベルゾ氏は「昨年から経済成長がやや鈍っているが、国内市場を広げる社会政策は機能している。中長期的に見れば好ましい経済状況にあり、欧米の経済危機への準備もできている」と語ります。

国際的に不十分

 ただ貧困が減ったとはいえ、ILOによると今でも人口の8・5%が極貧状態です。

 「ルセフ政権が貧困撲滅を最優先課題に掲げるのは当然だ。格差の縮小は国際的に見ればまだ不十分だ」とベルゾ氏。最低賃金のいっそうの引き上げや、世界でも特に高い政策金利の問題などに取り組むことが必要だと話します。


 ジニ係数 イタリアの統計学者、コッラド・ジニが考案した所得格差を測るための尺度の一つ。0に近いほど格差が小さく、1に近いほど格差が大きい。社会の不安定が生じる警戒ラインは0・4とされます。

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