2012年7月25日(水)
九州北部豪雨 農業・観光 大打撃
水田に土砂・流木 作付けは…
ホテル浸水 機器・備品壊れた
12日未明からの九州北部豪雨による土砂崩れで21人が死亡した熊本県阿蘇市では農業、観光業が大きな打撃を受け、今も9カ所の避難所で438人が避難生活を続けています。 (後藤慧、柴田善太)
|
熊本・阿蘇市
阿蘇市の水田3850ヘクタールのうち、2000ヘクタールが冠水。そのうち990ヘクタールに土砂や木が流れ込みました。
同市一の宮町の農家の男性(65)の水田には山のふもとから10キロ以上も流されてきた大きな木が数本、横たわっていました。男性の水田4ヘクタールにはすべて土砂と木が流れ込みました。
23日から市の農地被害受け付けが始まりました。市が国に情報を上げ、国が審査し農地復旧費の国庫負担割合を決めます。この作業が終わるのは「来年度の見込み」(市の農水課)で、それまでは泥出しや流木撤去はできません。
また農地の回復について市では3年はかかるとみています。
男性は「コメ作りは続ける。生活ですから。でもいつから作付けできるか分からない。今年は農協の共済で作付け分の6割が補償されるが、その後の補償はない。そこを何とかしてほしい」と言います。
助かった命頑張らんと
阿蘇内牧温泉の宿泊施設17軒のうち11軒は休業中。阿蘇プラザホテルは130センチの高さまで浸水しました。調理場の冷蔵庫などの機器がすべて壊れ、フロントのじゅうたんなどや装備品も使い物になりません。11月営業再開を目指しています。
同ホテルの支配人は「阿蘇は夏の避暑が観光客の一番多い時期で経営上、非常に痛い。70人の従業員は休職になる」と話しています。
JR豊肥線の立野駅(熊本)から緒方駅(大分)が不通、阿蘇市周辺の国道で通行止めがあることも観光の妨げになっています。
同市の各地では民家や店舗の泥出しが、ボランティアの手も借りて行われていますが、まだ残っています。
一の宮町の女性(76)の自宅は床下浸水ですが、床下には阿蘇山特有の固い泥(火山灰)が残っていました。床の板は全部交換しなくてはいけません。近くの家では泥にのみ込まれ一家5人が亡くなっています。
女性は「悲しくてなんと言っていいかわからん。でも助かった命だから頑張らんといかん」と目頭を押さえました。
要望実現へ 共産党奮闘
日本共産党は21日に救援センターを阿蘇市に開設、支援制度の紹介冊子をつくり住民の要望実現に努力しています。22日には佐藤義興(よしおき)市長に救援・復興対策の申し入れをしました。
川端忠義党市議は、「浸水被害は被災者生活支援制度の支援金があまり出ない。床上浸水でも半壊扱いにもならない。被害の実態にあった補償がされるように求めていく」と話しています。
九州北部豪雨による熊本県阿蘇市の被害 死者21人、行方不明者1人、重傷者1人。同じく阿蘇市の住宅、家屋への被害は全壊44棟、半壊30棟、床上浸水1357棟、床下989棟、一部破損は50棟となっています。
農林業関係被害額は熊本県全体で150億円を上回っており、さらに増える見込みです。
|