2012年7月24日(火)
きょうの潮流
「福島の人たちの苦しみに比べれば、私のがんの痛みや苦しみなど小さい」。この6月に亡くなった日隅一雄弁護士(享年49歳)は、生前、梓澤和幸弁護士に「なぜ頑張るのか」と聞かれ、こう答えたそうです▼元新聞記者で東電と政府の記者会見に通いつめていた日隅さんは、昨年5月、胆のうがんで「余命半年」と宣告されます。その後も取材を続け、情報の隠ぺいや誤りを告発。亡くなる直前まで執筆、講演、ブログ投稿と、すさまじい活動を展開しました▼その日隅さんが、寝られない夜に書いた最初で最後の絵本「大きな木の上の大きな目」。自分の身を犠牲にして仲間を危険から救ったサルの話で、最新刊『国民が本当の主権者になるための5つの方法』(現代書館)に収められています▼チンパンジーのミサのパパは、大きなヒョウが仲間に近づいてくるのを見つけます。「ウホウホ、あぶない」。大声で危険を知らせ、仲間の群れとは逆の方向へ逃げたミサのパパ。自分はヒョウに襲われ、仲間の命は助かります。でも誰もが同じようにできるわけではない。物語は大きな木の上で、順番に危険を見張ることを呼びかけます▼マスメディアが権力の監視役を果たしていないもとで、いかに情報を得るか、強い問題意識を持っていた日隅さん。真実を知るためには、みんなが「大きな目」を光らせる必要があるのでしょう▼「ウホウホ、あぶない」。日隅さんは、国民主権のためには比例代表制中心の選挙制度に変えるべきだとも訴えています。