2012年7月22日(日)
計画停電は再稼働の脅し
関電OBも批判
関西電力など電力4社はこの夏、管内で「計画停電」を準備しており、全世帯にダイレクトメールを送りつけています。今なぜ「計画停電」なのか、大飯原発再稼働強行に批判が広がっている関西を見てみました。 (兵庫県・喜田光洋)
6月末から関西全域に「万が一の備えとしての計画停電のお知らせ」が各家庭に送付されました。「原則、実施いたしません」としながらも、管内を六つのグループと八つのサブグループに分け、グループごとに1日2時間停電させると記しています。期間は7月2日〜9月7日。どこがいつ停電するのか、その「可能性」を前日午後6時ごろに公表、最終決定は停電の約2時間前。
「うちはいつ停電するのか、さっぱりわからない」「エレベーターが止まったらどうするのか」と不安や怒りが噴出しています。
救急病院や警察署は計画停電の対象外ですが、多くの医療機関、高齢者・障害者施設は実施を前提にした運営が強いられ、「停電中、たん吸引をどうするか」と命と健康に関わる事態になっています。
切り札として
今回の計画停電計画の出発点は、5月18日の政府「電力需要に関する検討会合」と「エネルギー・環境会議」の合同会合。「今年の夏に向けて…関西電力圏内を中心に非常に深刻な需給ひっ迫が見込まれ」(藤村官房長官)とし、「大規模な電源の脱落等万が一に備えて関電管内とともに、予備率がマイナスと見込まれる九州電力、北海道電力及び四国電力管内においても、計画停電の準備を進めておく」(配布資料)と決めました。「電源の脱落」とは発電所の事故のこと。この決定で電力4社が計画停電体制に入りました。
それと軌を一にして「計画停電」が、大飯原発再稼働の脅しの“切り札”として持ち出されます。
野田首相は6月8日、「計画停電が余儀なくされ、突発的な停電が起これば命の危険にさらされる人もでる。経済活動は大きく混乱する」と再稼働実施を表明しました。
美浜・高浜も
野田首相の言うとおりなら大飯原発が再稼働した以上、計画停電計画は撤回していいはずなのに、関電は「万が一に備えて」と実施体制を続けています。
関電OBで電力産業労働運動兵庫研究会の速水二郎氏は「とにかく『電力不足』と住民に思いこませ、大飯原発を動かし続けて美浜、高浜原発も再稼働させるための脅しにほかならない」といいます。
計画停電のダイレクトメールを住民に送っている九州、北海道、四国の3電力も、近く再稼働を狙っている原発を持つ会社です。
関西電力の需給状況は、実際はどうでしょうか。
大飯原発3号機がフル稼働に入った9日から15日まで連日、コストの高い火力発電所を6〜8基停止させ、猛暑でこの夏一番の電力需要(2552万キロワット)に達した18日にしても、供給力は大飯原発3号機分をさし引いても8%の余裕がありました。再稼働など必要がなかったことを示しています。
8月については、関電は5月に示した試算で、諸対策により供給力を2752万キロワット(大飯原発抜き)にできるとしました。昨年夏に需要がこれを超えたのはわずか6時間。揚水発電の稼働率を高めたり、大企業とピーク時の需要調整をすれば大丈夫であるなど、多くの識者が大飯再稼働抜きでもこの夏を乗り切れると指摘しています。
速水氏は「災害や大事故に備えるのは大事だが、いま計画停電などどこからみても必要ない。ましてや原発再稼働問題と事実上リンクさせるのは許されない。計画停電計画を撤回し、大飯原発を止めることこそ必要です」と話します。