2012年7月21日(土)
主張
社会保障解体法案
「激痛の法制化」は許されない
民主、自民、公明の3党は、消費税大増税と社会保障「一体改革」法案の参院審議を急ぎ、早期に成立させる構えです。重大なのは消費税の10%への引き上げと抱き合わせで「社会保障制度改革推進法案」を押し通そうとしていることです。密室「修正」協議で“社会保障の基本は自助”という「自民党の哲学」を民主党が丸のみし、社会保障への国の責任放棄を狙った前代未聞の法案です。憲法25条が定めた社会保障の理念を根本から否定し解体する「新法」を強行することは絶対に許されません。
国の責任放棄を本格化
「推進法案」は、法律の冒頭で“社会保障費が増大し、国と地方の財政が悪化している”とわざわざ強調しています。高齢化などによる社会保障費の自然増を敵視し、無理やりおさえ込む意図を露骨に示した異常な法案です。
法案が、社会保障の基本は「自助」「自立」であり、「家族相互」「国民相互」の「助け合いの仕組み」とうたったことは、国が社会保障の責任から手を引くことを宣言したことに等しいものです。
大多数の国民は自立して生きるために日々努力しています。子育てや介護など必死に家族を支え助け合っています。しかし、個人や家族の力だけでは限界があるからこそ国が責任をもつ手厚い社会保障制度が必要なのです。「自己責任」が基本と、国民を突き放す考えは社会保障とは無縁です。
法案が、年金・医療・介護について「社会保険制度を基本」と位置づけたことは、公費負担を否定し、単なる「助け合い」保険に変質させる方向を示すものです。
戦後の年金・医療・介護の社会保険制度は、戦前のような「助け合い」保険ではありません。国庫負担による財源を手当てするなど国が運営・拡充に責任を持つ仕組みに発展させてきているのです。国民健康保険の保険料が高すぎて払えないなどの深刻な事態は、「助け合いが基本」を口実にした国庫負担大幅削減などによりもたらされたものです。「社会保険」を基本とする新法ができれば、公費負担削減にいっそう拍車をかけ、制度の崩壊につながるものです。
医療や介護の「保険給付の対象となる範囲を適正化」と盛り込んだことは、公的保険でかかることができる医療・介護を制限する狙いです。保険はずしによる自己負担の増大などで保険証1枚あれば、いつでもどこでも医療を受けられる「国民皆保険制度」の空洞化を深刻にすることは必至です。
推進法案では、削減方針の立案・実行の「責務」を国に負わせる条項まで設けました。「医療崩壊」「介護難民」などの「痛み」をもたらし、国民から厳しい審判が下された自公政権の「構造改革」路線を上回る「激痛」の法制化です。国民にはかり知れない犠牲を強い、社会保障制度を解体させることにほかなりません。
手厚く支える制度充実を
戦後、国民の運動で築き上げてきた権利としての社会保障の理念と制度を根本から否定する「推進法案」は、徹底審議で廃案にするしかありません。
憲法25条にもとづき国民の尊厳が保障され、人間らしく生きていける社会を築くことが急務です。そのためにも消費税増税に頼らず社会保障を再生・充実させる道に、転換することが求められます。