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2012年7月18日(水)

大飯原発・敷地内 活断層の疑い

再調査要求が続出 保安院聴取会

専門家 「関電説明 信用できぬ」

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 関西電力大飯原発(福井県おおい町)敷地内の破砕帯(断層)が活断層の可能性があると指摘されている問題で、経済産業省原子力安全・保安院は17日、専門家による意見聴取会を開きました。再調査を求める声が続出し、政府が決めた再稼働の無謀さを改めて浮き彫りにしました。


 「活断層ではない」とする関電の説明に対し、出席した多くの委員から「信用に足る証拠が示されていない」「再調査すべきだ」との意見が相次ぎました。保安院は「専門家の意見として極めて重い。しっかり受け止めて、対応方針を決めたい」と述べざるを得ませんでした。

 大飯原発は3号機が1日に再起動。4号機も18日をめどに作業が進められていますが、再調査が実施されれば、今後の運転継続に影響を及ぼす可能性もあります。

 同原発敷地内の破砕帯については最近、渡辺満久・東洋大学教授(変動地形学)らが活断層の可能性を指摘しています。破砕帯が非常用取水路などを横断しており、断層が動けば、深刻な被害をもたらす恐れがあります。

 会合では、保安院が大飯原発の敷地の地質構造などに関する27年前の資料や図面を提出。関電は1985年の3、4号機設置許可申請時に行った試掘坑(トレンチ)の掘削調査時の写真などを提出し、「活断層ではない」とする、これまでの破砕帯の評価結果を報告しました。

 今泉俊文・東北大学大学院教授は「敷地内に破砕帯が多い。地層のスケッチも雑で、活断層ではないと資料ではわからない。再調査すべきだ」と述べました。杉山雄一・産業技術総合研究所主幹研究員も「傾斜の違う断層をつなげている関電の図が信用できない。現地調査をしてもらいたい」と要求。関電の掘削調査時の写真はブルーシートで覆われるなど、破砕帯が確認しづらいため、「全面が見える資料が公開されないのはおかしい」と指摘する専門家もいました。

 岡村行信・産業技術総合研究所センター長は「これ以上、説得力ある資料は出てこない。判断できる調査をする必要がある」と求めました。

図

解説

“施設に深刻な被害”

専門家 再稼働前から警告

 大飯原発の敷地内を走る破砕帯(断層)をめぐっては、活断層の可能性があるため再稼働前に早急に調査すべきだと、渡辺満久・東洋大学教授(変動地形学)らの研究グループが指摘していました。

 破砕帯とは、断層運動によって地層や岩石が粉々に砕かれた帯状の領域。大規模な断層は、大規模な破砕帯を伴う場合が多いといわれています。

 大飯原発の原子炉直下や近傍には、多数の破砕帯が存在することがわかっています。その一つ「F―6破砕帯」は2、3号機の原子炉建屋の間を通って数百メートルにわたって延びています。非常用取水路を横切っているため、緊急時の冷却機能に支障をきたす恐れが指摘されています。F―6は、トレンチ調査(溝を掘って地層を観察)が実施されていますが、国と関西電力は「活断層ではない」としています。

 しかし、トレンチ北側壁面の地質図を分析した渡辺教授は、岩盤のずれや粘土の付着状況などから「典型的な活断層の構造だ」と指摘。この断層が動いた場合には、地盤のずれによって原子力施設に深刻な被害をもたらす可能性があると警告しています。

 この地質図は、関電が3、4号機増設の設置変更許可申請(1985年)のために作製して国に提出。しかし2006年に改定された耐震設計審査指針を踏まえた国の見直し作業の際には、活断層の可能性をうかがわせる北側の地質図は提出せず、活断層であることを示す特徴が見られない南側壁面の地質図を示していました。このため、活断層の証拠となりえる資料を関電が意図的に隠したのではないかという疑問や、再調査を求める声が高まっていました。

 関電は「いったん設置許可申請で国にOKをもらっているのを補強する目的で、一例として南側を出しただけだ。意図的に隠したわけではない」と説明します。しかし、見直し作業に必要なデータを示さなかった関電や、それを要求しなかった国の責任が問われる事態です。

 一方、大飯原発周辺の活断層評価をめぐっては、海底活断層「FO―A」「FO―B」と陸側の活断層「熊川断層」が連動する可能性が以前から指摘されており、連動の際にF―6が動くことも心配されています。

 活断層の危険を見切り発車し再稼働を強行した政府・電力会社に、原発を運転・監督する資格はありません。原子炉をすぐに停止し、再調査すべきです。 (中村秀生)

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