2012年7月14日(土)
きょうの潮流
「木が立ったまま押し寄せてきた」。立ち木もろとも土砂が崩れてきたのでしょう。別の人は、「10分か15分の間に背丈まで水かさが増した」と恐怖を語ります▼九州に、西日本に、大雨が降り続きました。火の山・阿蘇のふもとに、「五木の子守唄」の里に、「荒城の月」の城あとの町に…。人をのみこみ押しつぶし、かけがえのない多くの命を奪った濁流が、うらめしい▼『雨の名前』(高橋順子著)という本に、80を超える夏の雨の呼び名が載っています。空が抜けるように降る「大抜け」。いっさい洗い流してしまうほどの「雨濯(うたく)」。目をむいて怒るように雷鳴をとどろかせて降る豪雨「瞋怒雨(しんどう)」。雷をともない、昼夜を問わず降り続く「暴れ梅雨」▼しかし、九州のありさまにてらすと、どれもこれもまどろっこしい。南から舌状に流れ込む暖かく湿った空気(湿舌)と北の寒気がぶつかって九州の西にできた、長さ数百キロにおよぶ巨大な雲の集まり(クラウドクラスター)が、大雨をふらしているようです▼昨年の東日本大震災でも、紀伊半島を襲った集中豪雨でも、水の力に押し流され、あるいはそれとたたかう人々の姿をみました。災害列島・日本。気象の異常も続くいま、いつ、どこで、誰が大災害にあっても不思議ではありません。が、そう分かっているのに犠牲者がたえない現実です▼いったい政府に、災害列島にみあう防災大国へと変える気があるのか。現場では、救出活動が続きます。一人でも多く助け出されますように。