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2012年7月13日(金)

主張

参院審議入り

偽りで塗り固めた「一体改革」

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 消費税率を10%に引き上げる増税法案や、社会保障の根幹を掘り崩す社会保障制度改革推進法案など「一体改革」関連法案の参院での審議がはじまりました。

 野田佳彦首相は11日の参院本会議で、「社会保障の充実、安定化と財政健全化の同時達成への第一歩だ」と説明しています。

切り捨てを「充実」と

 民主党と自公両党が密室談合で決めた改革推進法案は、社会保障を自助・共助・公助の組み合わせだとして、家族・国民の助け合いを強調しています。主な財源は消費税と明記しました。

 この法案について首相は、社会保障制度改革の基本方針を盛り込んだものだと答弁しています。

 社会保障の根幹は、国民の命と健康、暮らしを守るために何より国が責任と役割を果たすことにあります。社会保障の基本方針で自助や助け合いを強調することは国の責任を後景に押しやって社会保障の根幹をゆるがす重大な改悪です。もっとも弱い立場に陥った国民を助ける生活保護制度を敵視し、あからさまに支給の抑制をねらう法案の付則も目に余ります。

 社会保障の予算を抑制しようという法案の目的は明白です。自公政治による抑制路線で「医療難民」などと告発される異常事態が広がった社会保障の危機を、いっそう深刻にする法案です。

 もともと民主党政権の「一体改革」方針でも、消費税増税の5%のうち社会保障の「充実」に回すのは1%分だけにすぎません。それも、民主党政権がすすめている年金・介護・医療など社会保障の負担増でふきとびます。さらに社会保障の抑制をねらった法案を出しておいて、なお「社会保障の充実、安定化」と公言する―。野田首相の偽りは許せません。

 消費税は所得が低い人ほど所得に対する負担割合が高く、高所得層ほど低い反累進課税です。貧困と格差が主要国のなかでも最悪水準に広がっている日本では、とりわけ高所得層から低所得層への所得再分配を強めることが求められています。消費税増税は所得再分配の再建に対する逆流であり、ますます格差を拡大すると同時に中低所得層を痛めつけ、社会保障の効果を台無しにします。

 しかも、民自公3党の基本方針は社会保障の傷口をふさぐのではなく大きく開きます。そこで所得が低い人ほど負担が重い消費税を増税するなら、一部の富裕層以外の国民には何の救いもありません。

 首相がいう「財政健全化」は景気を悪化させないことが条件です。景気を悪化させて所得税、法人税の税収を減らせば1997年の消費税率の2%引き上げ後のように全体の税収も落ち込みます。

廃案に追い込むまで

 首相は「将来不安をなくすことで消費や経済を活性化させることもある」といっています。しかし消費税を5%も上げれば、経済に97年以上の大打撃となることは明らかです。貯蓄ゼロの世帯は約3割、若い世代では大幅に増えて4割を超えています。仮に不安がなくなっても取り崩す貯蓄はありません。そもそも社会保障の切り捨ては国民の不安を増幅します。

 公約違反の問題だけでなく、国民にしっかり説明するという首相の説明そのものが偽りに満ちています。廃案に追い込むまで徹底的に世論を広げていきましょう。


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