2012年7月12日(木)
小沢氏新党結成
「反増税・脱原発」貫けるか
小沢一郎氏の新党結成は、民主党の裏切りに憤慨する国民世論の圧力に押された末の分裂劇です。
国民に「やる」と約束した後期高齢者医療制度の廃止や最低保障年金制度の創設は放置し、「やらない」と誓った消費税大増税に一心不乱に突き進む―。民主党・野田政権の姿勢は国民世論に背き、自らの公約に背く、暴走です。
小沢氏は、そうした世論をみて、消費税大増税を「国民への背信行為」と厳しく非難しています。代表就任のあいさつでは、「消費税増税法案を撤回させるべく行動する」「脱原発の方向性を鮮明にしたい」と“反増税・脱原発”の旗を掲げました。世論に問うことで民自公3党との違いを際立たせようとしています。
しかし、問われるのは、小沢新党が「反増税・脱原発」を貫けるのか、国民の願いを受け止め切れるのかということです。
新党は、増税の「前」にやるべきことがあると言いますが、やった「後」の消費税増税そのものは否定していません。小沢氏が「増税の前にやるべき政策」としてあげるのが、「地域主権を確立するための行財政の抜本改革」など民主党マニフェスト(政権公約)への原点回帰を強く意識したものです。しかし、「『税金のムダづかい』を再生産している今の仕組みを改め」て生み出すとしたマニフェストの財源論はすでに破たんしています。そのことが、消費税大増税への「逆流」を引き起こしたのです。
「脱原発」はどうか。小沢氏が3・11以後、原発政策について口を開いたのは今回の分裂騒動が初めて。果たして、どんな理念、政策があっての「脱原発」かが問われます。それというのも、民主党が野党時代、原発を「過渡的エネルギー」としていた政策を変え、自民党と同じ「基幹エネルギー」として推進方向にかじを切ったのが小沢代表(当時)だったからです。
結党大会直後の記者会見で、小沢氏はこのことを問われ、「ちょっと勉強して調べてもらえばわかるが、私は原子力については過渡的エネルギーとずっと言い続けております」と強弁しました。
さらには、民主党が国民を裏切る発端となった、沖縄の米軍普天間基地「移設」問題では「最低でも県外」の公約をあっさりほごにした鳩山由紀夫首相・党代表(当時)のもとで幹事長を務めたのも小沢氏。この日のあいさつや新党の綱領でも、まともな安保・外交政策は示されませんでした。
代表就任のあいさつで、「もはや政権交代当時の民主党ではなくなった」と語りましたが、その“民主党の失敗”に共同の責任を負ってきたのは紛れもなく小沢氏自身です。その総括と反省がないならば、国民の期待を2度までも裏切ることになるでしょう。 (竹原東吾)