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2012年7月10日(火)

主張

生活保護改悪

生存奪う「国家戦略」は異常だ

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 厚生労働省が生活保護制度の本格的な改悪を狙う「生活支援戦略」の「中間まとめ」を、野田佳彦首相の直属機関で財界首脳が牛耳る国家戦略会議に提出しました。利用者の制度からの締め出しを徹底するとともに、保護費の削減を加速することが柱です。政府は最終報告を秋にまとめ法改悪に踏み切る構えです。生きる手だてと収入を失った人たちを支える制度から手を引くことを「支援戦略」などとうたうこと自体、異常です。憲法で保障された生存権を否定する財界主導の「国家戦略」づくりは許されません。

親族に「返還」求める

 「中間まとめ」には生活保護のあり方を覆す内容がいくつも盛り込まれました。その一つが親族の扶養義務を強化し、扶養可能な親族にたいして「必要に応じて保護費の返還を求める」仕組みを検討すると明記したことです。

 芸能人の母親が生活保護を利用していたことを自民党議員などが問題視した“異常な攻撃”を受けた動きです。このムードに便乗した小宮山洋子厚労相は、親族に扶養困難なことを証明させる法改定の意向を早々と表明しました。「返還」を求めることまで踏み込んだことは重大です。

 親族だけに扶養の義務を押し付けることは時代の流れに逆行するものです。終戦直後につくられた旧生活保護法は扶養義務者がいる場合は、たとえ扶養されていなくても保護を受けられないとする条項がありました。しかし、1950年制定の現在の生活保護法は“親族の扶養を強調することは封建的な時代錯誤である”という認識のもとで、扶養義務を保護の要件から除外する改正がなされたのです。自民党政権下でも、扶養が保護の要件であるかのようにいい、保護をあきらめさせることは、権利の侵害にあたるというのが建前だったのです。

 親族扶養義務を強化し、返還まで求める仕組みを持ち出すことは、歴史の歯車の逆回転です。親族から縁を切られたために生活保護を申請した人や、「親族に迷惑をかける」と生活保護の利用をためらう人は現在も少なくありません。本当に保護を必要とする人たちを排除する改悪は中止すべきです。

 国家戦略会議で生活保護をやり玉に挙げているのが財界代表であることは見逃せません。米倉弘昌経団連会長が「自助・自立を基本とする生活保護の適正化」が急務とはっぱをかけ、長谷川閑史(やすちか)経済同友会代表幹事が、親への扶養の法制化や、強い指導を行うべきだと要求しました。これに呼応して改悪内容をエスカレートさせたことは、財界いいなりの政治の有害さを浮き彫りにするものです。

貧困と格差なくしてこそ

 生活保護利用者が210万人を突破する事態になったのは、財界主導の「構造改革」路線によって多くの人が職を失い、非正規雇用と低賃金の労働者が大量に生み出された結果です。人びとを貧困に突き落としておいて、その人たちが最低限生きられるように張られている「最後の安全網」をズタズタにするのは本末転倒です。

 財界・大企業は雇用確保と賃金保障に責任を果たすべきです。憲法25条で明記された国民の生存権を保障する生活保護制度を充実させるとともに、貧困と格差拡大をなくすことが急務です。


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