2012年7月8日(日)
オスプレイ オートローテーション欠如
米国防総省文書に明記
米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイが2000年に墜落して19人が死亡した事故を受けて、米国防総省の「国防分析研究所」(IDA)が03年12月にまとめた内部文書に、同機はエンジン停止時でも安全に着陸できる「オートローテーション(自動回転)能力」が「欠如している」と明記していることが分かりました。
海兵隊元幹部「米軍最大の醜聞」
文書は「V22の払しょくできない安全性への懸念」という題名で、海兵隊大尉だった軍事評論家のカールトン・メイヤー氏が内部告発で入手。同氏は本紙の取材に対して、「IDAに所属していたレックス・リボロ氏が執筆した」と明らかにしました。リボロ氏は09年に米議会公聴会で証言し、オスプレイの欠陥を指摘したことで知られています。
文書は、オスプレイは試験飛行では「自動回転」できたものの、「エンジン出力を徐々に低下」させており、現実的ではないと指摘。回転翼を真上に向けたヘリモードでの突然のエンジン停止の場合、「自動回転」状態にするまでに時間がかかるため、高度2000フィート(約600メートル)以下だと緊急着陸できないとしています。
「オスプレイはエンジンが2機あり、同時に停止することはない」との見解に対しては「過去のデータを見ると、二つのエンジンを有する海軍・海兵隊のヘリは燃料の不純化により3〜4年に1回、(同時に)出力が停止している」と反論しています。
また、同文書は、回転翼機特有の失速現象である「ボルテックス・リング状態」(下降する際、回転翼の先端に渦巻き状の気流が発生し、機体を押し下げる状態)に陥った際、左右の回転翼に不均一な形で渦巻き状の気流が発生するため、通常のヘリと比べて制御不能に陥りやすいなど、六つの問題点を指摘(別項)。これらは(1)機体の左右に回転翼がある(2)回転翼の角度を頻繁に変える―といったオスプレイの構造自体に起因するとの見方を示しています。
米国防総省は、改善措置をとったとして07年からオスプレイを実戦配備しましたが、最近も墜落事故が相次いでいます。
メイヤー氏は「配備強行の背後に米議会や軍需産業の圧力がある。米軍最大のスキャンダルだ」と憤ります。
オスプレイ 六つの欠陥
@オートローテーション(自動回転)機能が欠如し、エンジンの緊急停止時に安全に着陸できない
A通常のヘリと比べて、VRS(ボルテックス・リング状態)で制御不能になりやすい
B通常のヘリと比べて、PIO(パイロットの動作に起因する振動)が発生しやすい
C左右に回転翼があるという構造上、油圧・電気・機械系統が長く複雑になり、不具合が生じやすい
D飛行に伴い発生する渦巻などにより、他の航空機と近接飛行していると制御不能になることがある
E着陸時に激しい吹きおろしが発生し、周囲のものを吹きとばす