2012年7月7日(土)
主張
大型公共事業拡大
大増税とムダ肥大化は許せぬ
「コンクリートから人へ」の公約を裏切り、ムダな公共事業を復活させてきた野田佳彦政権がその姿勢をますます露骨にしています。民主・自民・公明3党による消費税増税法案の衆院通過直後に、整備新幹線3区間の着工認可に踏み切ったのは、その象徴です。巨額な税金を大型公共事業に気前よくつぎ込む一方で、“国家財政が大変だ”と消費税の10%への引き上げで13・5兆円という空前の負担を庶民に押し付けることは絶対に許されません。
名実ともに逆戻りして
整備新幹線はもともと自民党政権時代に計画された大型公共事業です。事業は再三中断され2009年の民主党政権発足のときも凍結されました。その後、民主党政権は、なし崩し的に解除してきたのです。
今回新たに認可した3区間は(1)北海道(新函館―札幌の211キロ)(2)北陸(金沢―敦賀の113キロ)(3)九州(諫早―長崎の21キロ)です。民主党も問題視した採算性などは見通しがないままです。開業は北海道が24年後、北陸が14年後、九州が10年後と長期のため、現在見込んでいる総事業費約3兆400億円が膨張する危険もあります。地元住民からは在来線の存廃問題、過大な地元負担などから建設の見直し・中止を求める声があがっています。
政権交代の際に公共事業の見直しを掲げた民主党政権は後退に後退を重ねています。とくに野田政権は、いったん中止表明した八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)や、「1メートルつくるのに1億円」もかかる東京外郭環状道路(外環道)の建設続行を12年度予算でゴーサインを出しました。自民党政権時代に決まった大型公共事業を次々と再開させる民主党政権の姿は“古い自民党政治”に名実とも逆戻りしたことを浮き彫りにしています。
ムダづかいを続けておきながら、消費税増税を国民に押し付ける野田政権の態度にはまったく道理はありません。しかも、民自公3党が合意した消費税増税法案の「修正」に、「成長」などを名目に大型公共事業などに「資金を重点的に配分する」という条文をはっきり書き込みました。消費税増税で生まれた財源を公共事業の肥大化に“流用”することを公言したことにも等しいものです。増税は“社会保障のためだけ”という口実すら投げ捨てた暴走です。
この修正を強く求めた自民党が、今国会に提出している国土強靭(きょうじん)化基本法案には、高速自動車道や新幹線の「全国的な高速交通網の構築」「国際競争力の強化に資する道路、港湾」整備など従来型の巨大事業が目白押しです。10年間で200兆円も投じる構想です。消費税増税を、ムダな公共事業拡大の絶好のチャンスにしようとしていることは明らかです。
財界本位の政治の転換を
公共事業拡大を背後であやつっているのは財界です。日本経団連は、社会保障費増大が公共投資を圧迫しているとして消費税増税を強く求めるとともに、「国際競争力強化」のため港湾整備などを要求しています。生活密着型の公共事業は重要です。しかし、浪費的な巨大公共事業拡大は最悪の「将来へのツケ回し」です。財界の意向のまま消費税増税と巨大公共事業を推進する民主、自民の「増税談合」政治からの転換が急がれます。