2012年7月5日(木)
自民党 200兆円だ 公明党 100兆だ
大型事業 競い合う
「10年間で200兆円」(自民党)、「10年間に100兆円」(公明党)―。民主党との「密室談合」で、消費税大増税と社会保障改悪の「一体改革」法案を衆院通過させた自民、公明の両党が、次期総選挙をにらんで「国土強靭(きょうじん)化」「防災・減災」などと銘打って大型公共投資を競い合っています。消費税増税は、公共事業バラマキのためなのか―。
「国土強靭化」「防災」と銘打ち
3党密室合意による消費税増税法案には、消費税増税で財政にゆとりが生まれ、機動的対応ができるとして、「成長戦略や事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」との文言がこっそり挿入されました。
日本共産党の佐々木憲昭議員が、6月26日の衆院社会保障・税特別委員会で追及したように、消費税の増税分を「社会保障に全額使う」というのは見せかけで、実際には財源が置き換えられ、大企業への減税、無駄な大型公共事業、軍事費などに使われることになる恐れがあります。
「土建国家」
実際、自民党の国土強靭化総合調査会(会長=二階俊博元経済産業相)は、ことし4月、今後10年間で総額200兆円規模のインフラ投資が必要だとの提言を発表。6月1日の総務会で、「国土強靭化基本法案」を決定、同4日に国会に提出しました。
法案を取りまとめたプロジェクトチームの座長は、元建設省近畿地建局長の脇雅史参院国会対策委員長。法案提出者・賛成者には、二階氏はじめ、古賀誠元幹事長、野田毅元建設相、金子一義元国土交通相、大島理森副総裁など、建設族、道路族議員がズラリと名前を連ねています。
「大規模災害に強い国土づくり」などとしていますが、谷垣禎一総裁は6月1日の記者会見で、「自民党はまた土建国家をつくるつもりなのかという批判もないわけではない」と認めるほど。同基本法案18条には「高速自動車国道、新幹線鉄道等の全国的な高速交通網の構築」とうたっています。
消費税増税でバラマキ!?
負担増認める
一方、公明党も10年間に100兆円を投資する「防災・減災ニューディール」を打ち出しました。「公明新聞」6月4日付は、「従来型の公共事業バラマキではないか」という設問の「Q&A」を掲載。そのなかで、「事業全体の規模が公明党案の2倍」の自民党の国土強靭化法案をとりあげ、「国民の負担もそれだけ大きくなる可能性があり…」と指摘し、国民負担増を認めています。
自民、公明両党とも“防災”のためと煙幕をはっていますが、「その内容をみると旧来型の公共事業が並んでいる」(「日経」6月30日付社説)という代物です。
すでに民主党政権は東日本大震災を受け、地震に備えて「多重の物流網」をつくる必要があるとして、今年度予算で、東京外郭環状道路(1兆2800億円)、新名神高速道路(6800億円)など大型公共事業を相次いで復活させています。
消費税増税法案が衆院通過した3日後の6月29日には、整備新幹線の未着工3区間(北海道、北陸、九州・長崎ルート)の着工(計3兆400億円)を認めました。
消費税増税をあおってきた「日経」ですが、先の社説は「国民に増税への理解を求めなければならない今、こんなありさまでいいのか」と“注文”をつけています。